内容紹介
「1on1」とは、「上司と部下の間で、週1回~月1回、30分~1時間程度、用事がなくても定期的に行う対1の対話」のこと。インテル、マイクロソフト、グーグル、ヤフーなどの外資系IT企業を筆頭に、日本企業にも導入が相次いでいます。
働き方が多様化し、かつ、働く人の価値観多様化している昨今、従来よりもより深いコミュニケーションが求められるはずなのに、逆にコミュニケーションの機会がグッと減ってきています。そんな企業の悩みに対して、1on1が解決策の一つとして注目を集めています。
一方で、このために定期的に時間を割くのは難しく、ルーティン化してやめてしまうパターン、話すことがなくなってしまうパターン、成果が見えずやめてしまうパターンなど、多くの失敗例があります。本書は、実施方法だけでなく、失敗例や心理的に気をつけることなど(アドラー心理学の要素も随所に投入)、細かいところまで注意が行き届いており、日本で数少ない「1on1」の本の決定版といえるものです。
著者は、「1on1」をテーマに大企業などで数多く、そして一社でも数回にわたり講師を務めています。その中で出てきた質問など、経験も踏まえて記述しています。
「任せるリーダーが実践している1on1の技術」
小倉広著 日本経済新聞出版社刊 2019年5月
自ら5年の1on1の実践経験を著作に
著者の小倉は、社長としてコンサルティング会社を経営している間、1on1を5年間継続して実施してきました。当時、まだ1on1という言葉も概念も日å本に伝わっていなかった時期。しかし、小倉は独自に開発したマネジメント手法として、現在の1on1とほぼ同様の目的、手法で週に一度の部下のための1時間“ティータイム面談”(現在の1on1)を実施し成果を挙げていました。(著作「任せる技術」(初2010年)他に詳述
▲「任せる技術」小倉広著
日本経済新聞出版社刊
2010年刊行にて1on1
(ティータイム面談)の詳細が既述されている
▲「チームのルール」 2009年明日香出版社刊、「リーダーのための7つのステップ49のコツ」2010年日本能率協会マネジメントセンター刊にて、1on1(ティータイム面談)の実施を自らの体験として推奨
大手上場企業、中堅ベンチャー企業にて豊富な1on1支援実績
著者の小倉は、従業員数万名の大手上場企業を中心に年間100回以上登壇する人気講師です。1on1入門セミナーもしくは1on1導入実践3DAYS研修は同氏の人気コンテンツの一つです。また、同氏は組織人事コンサルタントとして企業における1on1導入運用を数多く支援してきました。これらに加え、同氏は「個人セッション」として多くの経営者と定期的に1on1カウンセリング、コーチングを実施して来ました。本書には、これらの経験が同書に散りばめられています
目次
PART1 経営者・人事部のための全社的視点での1on1
第1章 1on1って何だろう?
- シリコンバレーでは常識? 上司と部下の1on1
- 人事考課面談と何が違うの?
- 期待される効果――エンゲージメント(絆)により様々な効果が期待できる
- よくある失敗パターンと対処法
- 1on1の目的とは――2つのサイクルを回せ
- 「関係の質」と「心理的安全性」がパフォーマンスを高める理由
第2章 1on1導入の4つのステップ
- 公式制度か、非公式の草の根展開か
- フィジビリティ・スタディ(実施を前提とした試験導入)の流れ
- 【フェーズ0】フィジビリティの準備
- 【フェーズ1】本社スタッフ部門でのフィジビリティ1
- 【フェーズ2】ライン部門でのフィジビリティ2
- 【フェーズ3】全社導入と運用体制の確立
第3章 導入に際してよく寄せられる疑問
- 経営者からよく寄せられる疑問
- 人事部からよく寄せられる疑問
- 管理職からよく寄せられる疑問
- 部下からよく寄せられる疑問への対処法
PART2 管理者のための現場視点の1on1
第4章 必要な5つのスキル
- 1on1導入に必要不可欠な管理職のスキル
- 【スキル1】傾聴――カウンセリング、コーチングの基本
- 【スキル2】勇気づけ――1on1で最も大切なスキル
- 【スキル3】質問――部下の頭に空白を作り、思考を促す
- 【スキル4】フィードバック――事実と意見を区別して行う
- 【スキル5】結末を体験させる
第5章 あると便利な5つのメソッド
- 型を覚える
- 【メソッド1】傾聴――エンゲージメントを形成する
- 傾聴の3条件
- 【メソッド2】経験学習サイクル――組織底上げのための習慣化
- 【メソッド3】課題の分離――対人関係を解決する
- 【メソッド4】協力と目標の一致――部下を適切にサポートする
- 【メソッド5】解決志向ブリーフセラピー
第6章 欠かせない5つのマインド
- 仏作って魂入れず。心のないスキルは逆効果
- 【マインド1】尊敬――行為と人格を分離する
- 【マインド2】信頼――根拠なく白紙委任状を出す
- 【マインド3】協力――過干渉せず、放任せず
- 【マインド4】目標の一致――競合的態度を排除する
- 【マインド5】共同体感覚――他者を助け、喜ばせることを喜ぶ