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小倉広メルマガvol.335 「選ばせる、決めさせる」と伝わる。



vol.335 『「選ばせる、決めさせる」と伝わる。』 
出典:なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか



部下が「私はこうしたい」「この商品をこうして売ったほうがいいと思う」と
語り、ふと会社の経営方針を見た時に、
「何だ、うちの会社の経営方針って僕が思っていたことと一緒じゃないか」
と思ったら。
それは極めてよい錯覚です。
そんなよい錯覚を部下にしてもらうために、上司は部下に選ばせて、
決めさせましょう。
部下に選ばせ、決めさせて、自己決定感を持たせると、
部下のやる気や情熱を引き出すことができるのです。

◎自己決定感がコミットを生む

「参加なくして決意なし」という言葉があります。
人は自分で参加していないと決意できない、という意味です。
逆に人は、参加し自分で決めたことに関しては決意ができます。

そして、自分で決めたという自己決定感が
「コミット(コミットメント)」を生むのです。
コミットを日本語に訳すのは難しいのですが、
「絶対にやるぞ」という強い覚悟を持ったやる気であり、
取り組みのことです。

上司の話を部下に伝え、部下にコミットを持って仕事に
取り組んでもらうためには、
上司が部下自身に「決めさせる」ことが大切です。

「目標管理」という有名な言葉があります。
現代経営学の父と呼ばれるピーター・F・ドラッカーが提唱したもので、
一般的には「MBO」と略されますが、「Management by Objectives」が
本来の言葉であるととらえられています。ところがこれは、実は誤りです。
正しくは「Management by Objectives and Self-Control」で、
「MBOAS」なのです。

もともとドラッカーが主張していたのは、
一般的には省かれてしまっている「セルフコントロール」が重要であり、
自分で決めて自分で実行するから達成できるのだ、ということです。
その「自分で決めて」の「アンド セルフコントロール」が
抜け落ちて世の中に伝わっているため、
勘違いした上司が勝手に目標を決めてそれを部下に押し付けて
「目標管理」としているのです。
そうではなく、上司は部下に自分で目標を決めさせること。
そうすると、部下に情熱ややる気が生まれるのです。

◎錯覚でもいい

上司が演出し、錯覚させて部下に自己決定感を持たせることは、
部下のやる気や情熱を引き出すために非常に重要なことです。
そもそも世の中というのは壮大な思い込みや錯覚で成り立っています。
その壮大な思い込みを部下に気持ちよくさせてあげるのが、
上司の重要な仕事の1つだと、私は思います。

部下によい錯覚をしてもらうためには、
上司がたどった思考回路を部下にも歩ませて、
そして、あえて迷わせることです。
たとえば部下が、仕事でどの方法を取るべきか悩んでいたとしましょう。
その時、上司は「Aが正しい」と知っていますが、
部下には「オレも一緒に考えるから、まずは自分で考えてみて」と言います。
そこで部下が「Bがいいと思います」と言ったら、
上司は「そうかBか。なるほどね」とまずは「受けとめ」ます。

そして、こう質問をするのです。
「でも、Bだとこういう問題点が出てくると思うけど、
これについてはどう思う?」。
そうすると部下は、「そうですね……。じゃあBじゃないな。B’だと思います」
と言います。
さらに上司は「なるほど、そのほうがよさそうだね。
でも、それならダッシュの部分を強くしたらもっとよくなるんじゃない?」
と言います。
すると部下は「あ、確かにそうですね」とまた考えます。

こうして一つ一つ、部下の言う内容に、
上司が「こんな問題があると思う」
「こうしたらもっとよくなるかもしれない」と言い、
部下と一緒に考えます。

するとそのうちに部下が「これはAしかありませんよ」と言いだします。
そこで上司は「それは全くオレの考えと一緒だよ。おまえはすごいなあ」
と言う。
これが部下にいい意味での錯覚を起こさせるlつのやり方です。

上司も1人で考えていた時は、
「Aだ」とすぐにわかったわけではありません。
他のB案やC案も考えて、
最終的に「Aだ」と導き出したわけです。
部下はそんな上司より経験が少ないので当然、
BかなCかなと道に迷います。
その際、上司はあえて部下を道に迷わせてあげましょう。
そして「そっちに行くと危ないかもしれないよ」
「こっちは崖だよ」
と上司が情報提供してあげると、部下は上司がたどった道をたどり、
そのうちに自分でAを見つけるのです。

正直、これはたいへん面倒なことであり、
上司は辛抱強くなければできません。
しかし、
部下に上司自身がたどった道を意図的に歩かせ、迷わせ、壁に当たらせ、
走らせることで、部下は自分で見つけた、自分で決めたと
自己決定感を持ちます。
そして、部下には情熱や、やる気が湧き上がるのです。

◎GROWモデル

「GROWモデル」はコーチングなどでよく使う略語です。
「G」はGOAL(ゴール)、「目標」です。
「R」はREALITY (リアリティ)で「現状」と、
それからRESOURCE (リソース)「資源」です。
そして「0」がOPTION(オプション)、「選択肢」です。
これは「戦略」と訳すこともあります。
そして、最後の「W」はWILL (ウィル)で、「意志」です。

GROWモデルは、目標を定めてそれに向けて
やる気を引き出すためのステップです。
たとえば、ダイエットを例に挙げましょう。
現状70キロの人が60キロに体重を落としたいと思っていたとしましょう。
ゴールが60キロで、現状は70キロ。
そこで60キロという目標を達成するためのリソース(資源)を考えます。
リソースは、お金や時間、道具などです。
たとえば、月1万円なら払えるな、朝1時間ならなんとか使えるな、
と考えていきます。

次にそのリソースを使ってオプション、戦略を考えます。
たとえば、月1万円使ってジムに通おうか、
朝1時間使ってランニングをしようか、などです。
さまざまな戦略を考え、そのうちのどれでやるのかを決め、
その決めたことに対しウィル、最終決意をする、というステップです。

GROWモデルは部下のやる気を引き出す時にも有効です。
しかし、この時に多くの上司がやりがちなのは、
GROWモデルの「GRO」を全部自分が1人でやってしまうことです。
たとえば先ほどのダイエットの話であれば、
上司は部下に、次のように言います。

「おまえの目標体重は60キロだ」
「今70キロあるからあと10キロ減らさないといけない」
「そこでおまえがやるべきオプションは野菜を食べること」
「つべこべ言わずに野菜を食べるんだ、いいな」
「どうだ、やる気になったか?」と。
上司がGROを全部やり、部下にWILLだけを迫るわけです。
これでは部下がやる気になるはずはありません。

部下のやる気や情熱を引き出すためには、部下にGROを自分で選ばせて、
決めさせなければなりません。
それを上司は支援する。
それが、話が伝わる上司のスタンスなのです。

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