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小倉広メルマガvol.320 講演会で後ろの席から座る人は、リーダーの適性が低い。



vol.320 『講演会で後ろの席から座る人は、リーダーの適性が低い。』 
出典:成長する人は知っている28の小さなきっかけ



「今日は大盛況ですねえ」。
講演主催者の後藤さん(仮名)が言いました。
「申し込みで軽く100名を超えてますからねえ。
椅子が足りなければいつでも足せるようにスタンバイしているくらいですよ」と、
ニコニコしながら話します。

講演開始30分前。
受付を終えて早めに来た来場者の方が、ちらほらと席につき始めています。
その座り方を見ているとおもしろい。
大きく分けると、最前列から座る人と最後列に座る人に分かれるからです。
私はその様子を興味深く見つめていました。
すると、後藤さんが私の視線の先を推測しながら、こう話しかけてきました。

「やっぱりやる気のある人とない人の差ですかねえ。
私なんかは、講演会に出るときは、必ず最前列。
しかも、真ん中を目指していくものですがねえ。
どうせ聞くのなら、講師の先生の真ん前で、
表情や声の大きさを感じながら聞いた方がいいに決まっているのに。
なんで、わざわざ後ろの席から座るんでしょうかねえ。
もったいない、もったいない」
まさにおっしゃる通りです。

しかし、私は、もう一つ理由を付け加えたくなり、
後藤さんに思わず話しかけてしまいました。
「後藤さん。我欲を削る、ですね」と。
私が敬愛する教育者であり哲学者でもある森信三先生は、
代表的著作である『真理は現実のただ中にあり」(致知出版社)の中で
このように述べています。

「申すまでもなく席のとり方は、前から順につめるというのが礼儀です。
つまり前をあけないのが礼儀です。
それに反して、前をあけるのは人の邪魔をするわけで、
これほどひどい不作法はないわけです」

つまり、自分一人が間近で見られるように、という我欲だけのために、
前から詰めて座るのではなく、後から来た人が座りやすいように、
来場者の皆さんのために前から座る。
このような気持ちを持つことが大事だ、とおっしゃっているのです。

そんな話をしている最中にも、
たくさんの人が続々と来場し、後ろの方から席が埋まっていきました。
私たちは、目を合わせ、笑いました。
そして私は言いました。
「リーダーシップの問題ですね」

リーダーシップとは「集団を一定の方向(ビジョン) へ向けて動かす影響力」
のことです。
そして、リーダーシップには肩書きは関係ありません。
一人ひとりが持つビジョンの力や、
人間としての信頼性などの目に見えない影響力で人を動かしていく。
それがリーダーシップです。

ですから、部長、課長といった肩書きがない平社員であっても。
また時と場合によっては派遣社員やアルバイトさんでも。
集団をビジョンへ向けて動かす影響力を発揮するとしたならば、
それはリーダーシップを発揮したことになる。
逆に肩書きがあろうが、
人を動かすことができなければリーダーシップを発揮できていない、
ということになるのです。
そしてリーダーシップを発揮するときに、
もっともやってはいけないのが「我欲」のために
メンバーを動かそうとすることです。
リーダーが自分自身の成績のためにメンバーを動かそうとする。
自分自身の名誉や評価のためにメンバーを動かそうとする。
自分が楽をするためにメンバーを動かす。
これら不純な動機のためにメンバーを動かそうとすると、
メンバーは敏感にそれを察知します。

そして「バカバカしい」と思い、動かなくなる。
だからこそ、リーダーシップの発揮において「我欲」は厳禁なのです。

それとは逆に「献身」の姿勢が見えたとき、
メンバーはリーダーについていこうと思います。
リーダーがメンバーを助け支援するために、
リーダーにとってもっとも大切な時間を使ってくれる。
もしくは、心を配ってくれる。
リーダーが自分自身を投げうってメンバーのために尽くそうとする。
その姿勢こそがメンバーを動かすのです。
その意味でも、リーダーになろうとする人は「我欲」を削り取らなければならない。
つまり、講演会場に座るときは前から詰めて座らなければならないのです。

「なるほど。そういうわけですか……」
びっしりと満席になった会場をぐるりと眺め回しながら後藤さんは言いました。
「この会場を例に取れば、前の方に座っている人がリーダーの候補であり、
後ろの方から座っていた人はリーダー適性が低い、と。こういうわけですね」
「はい。あくまでも推測ではありますが。そういうことになりますね」
「我欲」とは何も「オレが、オレが」と前面に出ようとする動きだけを
指すのではありません。
「私は目立たないように後ろの席で結構です……」という考え方も
立派な「我欲」なのです。

それを削り取り、目立って恥ずかしいかも知れないけれど、
後から来た人が座りやすいように前から詰める。
それも、「我欲」を削る訓練になるのかもしれません。

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