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小倉広メルマガvol.315 既に「課長の仕事」をしている人を後から課長にする



vol.315 『既に「課長の仕事」をしている人を後から課長にする』 
出典:任せる技術



◎課長になってからやります、という人はなってもやらない

これまで講演や研修で3万人以上の管理職や管理職候補たちと
向き合ってきた。彼らは皆一様にリーダーシップの問題を抱えている。
その中で意外なくらいに多い課題が、
「役職がないから遠慮してしまうんです……」というものだ。

「小倉さん、僕はまだ課長になる前の主任です。
その僕が課長のようにリーダーシップを発揮することはできません。
いや、やってはいけないと思っています。
それは職権を逸脱しているからです」
なるほど。言葉だけを聞くと正しく聞こえる。
しかし、どうも腑に落ちない。
彼の言葉の裏側に、言葉とは裏腹な責任逃れのようなものが見え隠れするからだ。

僕の経験からはっきり言おう。
この手のタイプの人は課長になっても課長の仕事をきちんとやらない。
そもそも世に存在する仕事の多くは職務記述書の範囲を超えているものだ。

それに目くじらを立て杓子定規に主張する人が
自己犠牲や献身を求められるリーダーの職を全うできるはずがないのだ。
「金がないから何もできないという人間は、
金があっても何もできない人間である」、
阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者・小林一三氏の言葉である。
「課長の肩書がないから何もできないという人間は、
課長になっても何もできない人間である」。そういうことだ。

そんな時、僕はかつてお世話になっていたリクルートという会社の例を話す。
リクルートのリーダーたちは、課長になってから課長の仕事をするのではない。
それでは遅すぎるのだ。
そうではなく、課長になる前からグイグイとみんなを引っ張り、
リーダーシップを発揮している者を課長にするのだ。
「既に『課長の仕事』をしている人を後から課長にする」
これが健全な組織のあり方だと僕は思う。
そもそもリーダーシップとは肩書や権限に頼らずに
属人的な影響力や信頼関係で人を動かす力を指す。
公式な権限や予算で人を動かすのはマネジメントという行いだ。

部下に「ムリして任せる」時は、マネジメントを求めてはいけない。
肩書に関係なく発揮できるリーダーシップを求めるのだ。

◎肩書なしでインフォーマルに要望する

「小倉さん、そうは言っても肩書なしで課長の仕事を
任せるわけにはいきません。
具体的にどうすればいいのですか?」。
多くのリーダーはこんな質問を僕に投げかけてくる。
答えは簡単。
インフォーマルに任せればいい。

インフォーマルとは「非公式」という意味だ。
つまりは「非公式」にできる範囲で任せていけばいい。
例えば「公式な」権限としては、
決裁の印鑑を持たせることはできない相手に
「稟議決裁の経験」をしてもらいたい、という場面を想定してみよう。
その場合、捺印を彼に任せることはできないが、
直前までの「決断」を求めることは可能だろう。

僕のクライアントに器の大きな経営者がいる。
彼は30歳になったばかりの若手執行役員を育てるために、
彼の出す決裁書類をよく見ずに判を押す、と言うのだ。
「おまえがやりたいならばオレはそれを信頼する。
その代わりいい加減な稟議をあげるなよ」
そう言って彼に実質的な稟議決裁を任せている。
社長の疑似体験をさせているのだ。

僕はかつてリクルートにお世話になっていた頃、
課長でもないのにチームメンバーの一次人事考課を任されたことがある。
課長は言った。
「オレは現場の細かいところまではよくわからん。
小倉の方がよく見えているだろう。
だからおまえの考課をそのまま一次考課にするよ。
シートを記入したら詳しくその理由を教えてくれ」
僕は管理職の仕事の中で一番大切な人事考課を
疑似体験することができたのだ。

僕が在籍していた古き良き時代のリクルートには
不思議な役割や呼称がたくさん存在した。
01 (ゼロワン) などはその最たる例だろう。

社員コード番号の頭に01がつく人が、その部署のリーダー格。
つまりは次期課長候補だったことからその呼称が生まれたと聞くが、
真偽のほどはわからない。
僕たち社員は当たり前のように01が誰であるかを知っていた。
例えば新宿支社営業2課の課長は山田さん、01は須藤さん、というふうに。
しかし、課長はフォーマルな職位であったが、
01はインフォーマルな役割だった。
つまりは、01には何一つ権限もなければ、役職手当もない。
しかし、皆から現場リーダーとして認められ、多くの責任を負わされていた、
いや自ら進んで負っていたのだ。

業績数値のとりまとめ、後輩の人材育成、あらゆる場面での現場の取りまとめ。
プレイヤーとして最高レベルに高い目標を持ちながら、
課長の仕事をほぼすべてやっていたのだ。

責任だけ重く、それに見合った報酬はないインフォーマルな役割である01。
しかし、彼らはその責任に誇りを持ち、
誰一人としてやらされ感を持つことなく職務を全うしていた。

そうして現場でリーダーシップ発揮を実践し、
「既に課長の仕事をしている」彼ら01を会社は「後付けで課長にした」のだ。

人はごく自然に成長するのではない。任されて育つ、のだ。
僕たち管理者はその環境を「意図的に」つくらなくてはならない。
インフォーマルな役割をつくり出し、
「任されて育つ」環境をつくり上げなければならないのだ。

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