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小倉広メルマガvol.308 柔道話法とスポットライト話法を使うと伝わる



vol.308 柔道話法とスポットライト話法を使うと伝わる。 
出典:なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか



柔道話法とは「まさにおっしゃる通りです」と返すこと。
スポットライト話法とは「まさにそこがポイントです」。
この2つの話法を使って上司が話をすると、
部下の情熱や、やる気を引き出せます。
それはなぜか? 部下の発言に紐付けて上司の話をすることになるからです。
人は自分が聞きたい話しか聞きません。
ならば、上司のしたい話を部下の聞きたい話に紐付ければよいのです。
その時に使うテクニックが、この柔道話法とスポットライト話法なのです。

◎人は聞きたい話しか聞いていない

人は話を聞く時に、自分の聞きたいことしか聞いていません。
たとえば、お腹がいっぱいな人に料理の話をしても、
聞いてはくれないでしょう。
また、車に興味がない人にスポーツカーの魅力を話しても、
聞いてくれるはずがありません。
相手は「なるほどね」とうなずいているだけで、
実は全く聞いていないのです。

ですから、上司が部下に伝えたいことがあるならば、
まずやらなければならないのは「部下の聞く姿勢を作る」ことです。
逆説的に言えば、人は自分の聞きたいことや、
自分に関係すると思うことであれば聞いてくれるのです。

そこで本章では、
さまざまな「部下の聞く姿勢を作る」方法を述べてきました。
たとえば、部下のお腹の中に詰まっている「黒い石」を取り出して、
それに対する解決法を示したり。部下の黒い石に紐づけて話したり。
もしくは、ベネフィットと貢献に翻訳して話したり。
部下のビジョンを聞き出して、
会社のビジョンと重ね合わせるお話もしました。

そして、これらに関連したスキルが、
次で説明する「柔道話法」と「スポットライト話法」なのです。

◎「まさにおっしゃる通りです!」「まさにそこがポイントです!」

たとえば、会社で新商品を出すことになったとしましょう。
ところが現場は非常に忙しい状態だとします。
「新商品が出たからこれも売ってくれ」と上司がそのまま言えば、
部下たちが「またですか」と、うんざりするのは目に見えています。
そこで上司は「柔道話法」を使うのです。

上司はまず部下に現状を尋ね、部下のお腹の中から黒い石を引き出します。
すると、部下からはいろいろな不平不満が出てきます。
そのうちに部下が、こんな話をし始めました。
「今でも忙しくて大変なのに、
最近はお客さんから不満を言われることが多いんです」
「うちの商品のここがダメとか、あそこが足りないとか」
「他社の商品のほうがいいとか言われるんです」と。
その時、上司は「まさに君が言った通りのことなんだよ」
「実はね、それを全部クリアしている新商品が出るんだよ……」と、
上司が話したかった新商品の話に持っていくのです。
これが柔道話法です。

「柔よく剛を制す」という言葉がありますが、
柔道で体の小さな人が自分より大きな人を投げとばせるのは、
相手の力を使って投げるからだといいます。
同様に、柔道話法も相手の力を使います。
部下に不平不満を言わせ、それを「まさにそれだよ」「君の言った通りだよ」
「これが君の言っていたお客様の不満を解消する新商品なんだ」
と、上司のしたかった話にグイッと紐づけるのです。

次に「スポットライト話法」です。
柔道話法が上司と部下の1対1で使うのに対し、
スポットライト話法は上司対メンバー全員など、1対多の時に使用します。

そして、スポットライト話法を使う時も、
上司がまずは部下に先に話をさせます。

では、先ほどと同じく、
上司が部下に新商品の話をしたいと考えているとしましょう。
そこで上司は会議を聞き、皆の話を聞き出します。
すると、各人がさまざまな不平不満や疑問を出します。
上司はその話を「なるほどね」「そういうことがあるのか」
と一つ一つ聞いていきます。

するとその中に、
上司が「待ち構えていた」不平不満が出てくることがあります。
それをキャッチした上司はすぐさま、「それは大事なことだね」と
その話にスポットライトを当てます。
そして「それね、もしかしたら解決できるかもしれないよ。
実は新商品が出ることになってね……」と
柔道話法で自分が話したい話題に持っていく。
これが、スポットライト話法から柔道話法へ持っていく連続技です。

上司は部下の話を聞き、上司の話と一致するものにスポットライトを当てます。
そして、その部下の話に上司の話を紐づけて話すと、
部下は「自分の話を聞いてくれた」「自分の考えていたことが会社に伝わった」
と感じます。
そして、上司の話は自分が考えていたことと同じだと思った部下は、
身を入れて上司の話を聞いてくれるようになるのです。

◎詐欺でも嘘でもない、演出

この2つのテクニックの話をすると、「ちょっと詐欺欺っぽくないですか?」
「なんだか下をだましているようで……」と言われることがよくあります。
部下が言うことと逆の方向に上司が話を持っていくのであれば、
これは上司が部下をだましていることになります。
しかし、この2つのスキルを使う時は、上司と部下の方向性は同じなのです。
上司がこのスキルを使うと、部下は自分の意見が通ったと錯覚します。
錯覚はするけれど、部下の意見が通っていることに変わりはありません。
詐欺でもなければ嘘でもない。これは「演出」だと私は考えています。

大切なのは、柔道話法もスポットライト話法も、
部下から話を聞くことが前提にある、ということです。
上司が部下から話を聞き出さなければ、どちらも使うことはできません。

つまり、上司が部下に話を「伝えたい」と思うのであれば、
逆に「まず聞くこと」が何よりも大切なのです。
先ほどもお話ししましたが、人は自分の聞きたい話しか聞かないからです。
そこで上司は部下の話を聞き、この人は何が聞きたいのだろう、
この人は何に興味があるのだろう、
この人は何に不満があるのだろうといったデータを集めます。

そしてそれらを全部つかんだ上で、
その中にスポットライトを当てて柔道話法でつなげます。
そうすることで初めて、
「実はあなたの言いたいことと私の言いたいことは一緒でしたね」
と上司は演出をすることができるのです。

多くの上司は、部下がお腹がいっぱいでも食べさせ、
部下が聞きたくもない話を延々と話し続けます。
つまり、一人相撲を取っているわけです。
しかし、優秀な上司は部下に合わせます。
部下の話を聞き、部下が聞きたいと思っている話をします。
部下の聞きたい話が、結果的に上司が話したい話になっている。
これが部下の情熱や、やる気を引き出し、
上司の話を部下に伝える理想的な状態なのです。

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