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1月16日配信 小倉広メルマガvol.302 「ビジョンを重ねる。」



vol.302「ビジョンを重ねる。」
出典:任せる技術


◎人生のビジョンがない部下には任せられない

仕事を任せる時には部下に自分からジャンプさせ選ばせる。
僕は先にそうアドバイスをした。
しかし、そうするためには絶対に必要なことがある。
それは部下が自分なりの「判断基準」を持っていること。
そして、その「判断基準」が
長期的な「人生のビジョン」であることが必要だ。

部下の立場に立って考えてみよう。
上司から仕事を任せたい、と申し出があった。
どうやら今よりも仕事が増えそうだ。
しかし、すぐに給料が上がるわけではない。

目先の損得だけを考えれば、
これは間違いなく
「損」「給料が上がるわけじゃないし。
だったら面倒だから断ろう」

このように考えるのが、ごく普通の判断というもの、だろう。

しかし、もし彼に将来の夢があったならどうだろう。
例えば独立して社長になりたい。
もしくは他社からスカウトが来るような
プロフェッショナルになりたい。
そんな夢があったとしたら、きっと判断は変わるに違いない。

「将来独立するためには、この経験はプラスになる。
自己成長のためにぜひやらせてもらいたい」。
そのように答えが変わってくるだろう。

あなたの部下はどちらのタイプだろうか。
目先の損得で判断するタイプか。
それとも人生のビジョンや夢を持ち、
それをかなえるために自己投資を厭わないタイプだろうか。

それにより、あなたが部下に仕事を任せることが
成功するか失敗するかが決まるのだ。

◎部下と一緒にビジョンを描く

「こりゃダメだ。うちの部下のうち、
将来のビジョンや夢を持っている人はいないや」

「うちの部下は目先の損得勘定ばかりをして困る。
仕事を任せられる人はいないなぁ」

そう感じた方が大半ではなかろうか。

世の中には、明確な人生のビジョンを持ち
仕事に取り組んでいる人は1割に満たないと思う。
これまで3万人の管理職に研修や講演をしてきた僕の実感値では、
1~2%がいいところだろう。
つまり、あなたの部下は明確な人生のビジョンを持っていない、
という前提で考えなければならないのだ。
では、いったい上司は何をすればいいのだろうか?

答えは簡単。
部下が自分の人生のビジョンを描くお手伝いをするのだ。
人生のビジョンとは目先の目標数字のことではない。
その先にあるゴール。どのような人間になりたいのか?
どのような人生を歩みたいのか?
それが人生のビジョンだ。
それを描くのだ。

方法としては、部下と定期的に面談をすることが一番有効だろう。
できれば週1回。
ムリならば月に1回。質問はシンプルだ。
「将来どうなりたい?」「どんな人になりたい?」。

たかだか1~2回の面談で部下から答えは出てこない。
漠然としたイメージが浮かべばいい方だろう。
それでいい。繰り返し、繰り返しそれを問うことだ。
そして、ぼんやりとでもそれが浮かんだとしたら、
いよいよ第二ステップの質問に移ろう。

「そのビジョンを実現するために、今のあなたに足りないのは何だろう?」

すると、十中八九の高い確率で
「今の仕事をさらに頑張ることです」という答えになるはずだ。
もしくは「今以上に難しい仕事にチャレンジすることです」となる。
そうすればあなたはいよいよ総仕上げ。
最後の質問をすることができる。

「僕は君にこの仕事を任せたい。決めるのは君だ。どうする?」

部下に仕事を任せるためには、部下の人生のビジョンが必要だ。
それを共に描いてあげる。
それもリーダーの大切な仕事の一つなのだ。

◎ビジョンなし、なら今に集中

実際に部下と人生のビジョンについて面談するとわかることがある。
それは、何度質問を繰り返しても
ビジョンが見つからない部下がたくさんいるということだ。
これまで彼らは「ベキ論」に縛られて生きてきた。
だから突然「どうしたい?」「どうなりたい?」と聞かれると
うろたえてしまうのだ。

「やりたいことが見つからない」。
そういう若者が増えているのだという。
では、僕たちは彼らに対してどう接すればいいのだろうか?

これまで言ってきたことと矛盾するようだが、
僕はその場合は、ムリしてビジョンを描かなくてもいいと思う。
今、目の前にある仕事に120%集中するよう
導いてあげればいいのではないか。

キャリア・ドリフト理論という考え方がある。
キャリアはデザインするものではない。
偶然に出会うものだ、という考え方だ。

ただし、そのためには条件がある。
今、目の前にある仕事に120%集中することだ。
「自分に向いていないかもしれない……」などと言わずに
その仕事に集中するのだ。
その時に初めて偶然が、幸運が訪れる。

阪急東宝グループの創始者である
小林一三氏の言葉に次のようなモノがある。

「もしも下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。
きすれば、誰も君を下足番にはしておかぬ」

きっとそういうことなのだろう。
だからこそ、ムリにキャリアを描かなくてもいい。
その場合は、自の前の仕事を一所懸命つきつめて、偶然の訪れを待つ、
という方針でもいいはずだ。

その心得を持った部下には仕事を任せられる。
「決めるのは君だ」。
上司がそう問うた時には素直に「やってみます」と言ってくれるだろう。
何しろ「日本一の下足番」を目指すのだから。

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