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12月26日配信 小倉広メルマガvol.300 「顔で笑って心で泣いて、 武士は食わねど高楊枝」



vol.300「顔で笑って心で泣いて、 武士は食わねど高楊枝」
出典:任せてもらう技術


辛いときこそ笑うのが上司のつとめ

20代のころ、僕は上司に指摘されたことがある。
「小倉、ストレスが全部顔に出ているぞ」
よほど僕が仏頂面をしていたのだろう。
うまくいかないことやイライラすることがある度に、
何も考えず、そのまま顔に出していたのだと思う。
そんな僕が上司になってみてわかったのは、
「上司はいつも笑っていなくてはいけない」ということだった。

組織のリーダーが怖い顔をしたり、不安そうな表情をしていると、
部下はとても不安になる。
「大丈夫かな、何かあったんだろうか」
そんなことを考えていると落ち着かないし、目の前の仕事に集中できない。
上司が仏頂面をしているチームほど、マズいものはないのだ。

会社を立ち上げて社長になったとき、僕はそのことに気づいた。
そして、どんなに大変なこと辛いことがあっても、
いつも笑顔でいようと心に決めたのだ。

これを実践するのは想像以上に難しい。

特に、会社の資金繰りが悪化したり、
企業同士の業務提携でもめたりといった深刻な場面では、
笑ってなんていられないことも多かった。
ふと気づくと、眉間にしわを寄せて、
ものすごい目つきで考え込んでいる自分がいることもあった。

だから僕は、つくづく、お笑い芸人はすごいなと思う。

明石家さんまさんは、いつも楽しそうにゲラゲラ笑っているけれど、
人問なのだからしんどい日だってあるはずだ。
それでも彼は絶対に人前では顔に出さない。
あれこそがプロというものだろう。

会社の上司も、管理職としてのプロ意識が高い人ほど、
笑顔の裏で辛いことや大変なことを隠しているはずだ。

だけど、怒りも不安もストレスも顔には出さない。

たとえ「下手をしたら、うちの会社はつぶれるかもしれない……」
というときでさえ、平気な顔をしているのが上司のつとめだ。

それはまさに「武士は食わねど高楊枝」の精神といえるだろう。

◎自分の意思に反する決定ものみ込まなくてはいけない

それに、上司にだって上司がいることを忘れてはいけない。
部長や課長といった中間管理職は、
さらに上の人たちの意見に従わなくてはいけないこともしょっちゅうだ。

たとえ自分はA案がいいと思っても、経営会議でB案だと決まれば、
それをのむしかない。
だが、B案に決まったことを現場の部下たちに伝えるのは、
部長や課長の仕事だ。

自分の意見と異なる案でも、
それを会社の決定事項として話さなくてはいけない。

ここで、ダメな上司はつい、こういってしまう。
「俺は本当はB案には反対だったんだよ。
でも、会社が決めたことだから、仕方ないよね」

しかしそんなことをいったら、組織の統制はメチャクチャになる。
「そうか、課長も本当はやりたくないんだ……」、
そう思った部下たちは、B案の仕事を一生懸命やらなくなるだろう。

だからこの場合、たとえ本心ではA案がいいと思っても、
B案に決まった以上は、それを自分の意思として伝えるのが、
正しい上司のあり方だ。

不満そうな表情など一切見せず、
笑顔で「今回の選択はB案がベストだ」といい切るのが優秀な上司なのだ。

だが、想像してみてほしい。

これって、ものすごく辛いことだと思わないだろうか?

自分の意見とは異なる決定をのみ込むには、心の整理が必要だ。
とことん議論して、意見をぶつけ合った末でなければ、とても納得などできない。
だが、毎回それをやるにはパワーも時間も必要だし、心身ともに消耗する。
だから、上司は会社の決定に100%納得ができないまま、
生煮えの状態で上の意見をのみ込んでいることもよくあるのだ。

上司は部下の見えないところで、
そんなバトルや葛藤を日々、繰り広げている。

キミの前でニコニコしている上司を、そっと観察してみてほしい。
もしかしたら今この瞬間も、心のなかで泣いているかもしれないのだから。

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