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12月12日配信 小倉広メルマガvol.298 「状況に動じない軸とは何か」



vol.298「状況に動じない軸とは何か」
出典:折れない自分のつくり方


◎リーダーには自分軸が不可欠

揺れない信念を築くために第1章では、
コントロールのできない他人軸を捨て、
自分軸で思考・判断することの重要性を説いた。
第2章では、その自分軸がいかなるものなのか、
どのようにつくり上げていくか、についてお伝えしよう。

自分が主体となって考え、答えを出すこと。
それは一見簡単そうに見えるかもしれない。
だが、リーダーに課せられる役割は容易ではない。
正解が一つではない場合なんてしょっちゅうだし、
最良と思った判断が意に反した結果を生むこともある。

意思決定に対して予想もしなかった方向からボールが
投げつけられてくることもある。
わかっていても揺れる。ぐらつく。自信を失いかける。そして、後戻りする。
相手の反応に左右されて他人軸に戻ってしまうのだ。

その揺り戻しが、自分軸をつくる過程で必ず起こる。
そのときに、私がどのように対処してきたか。
偉大な先人たちの例も交えながらお伝えしてみたい。

まずは「自分軸」とは何か、だ。
大リーグシアトル・マリナーズのイチロー選手を例に、
確固たる軸がいかなるものなのかをイメージしていただきたいと思う。

◎ブレないイチローの判断軸

2009年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝の韓国戦。
3対3で迎えた延長10回表。ツーアウト一、三塁の場面。
韓国のピッチャーは守護神イム・チャンヨン、
バッターボックスにはイチローが立っていた。

この日3安打を放っていたとはいえ、同大会のイチローは、
予選、決勝ラウンドを通じてチャンスにことごとく打てなかった。
批判の声が新聞をにぎわし、落胆の空気はお茶の間にも漂っていた。
だが、この最高の場面でイチローは、カウント2-2からファウルで粘った8球目、
イムの投じたスライダーをセンター前にはじき返し勝ち越し点をあげたのだ。
沸き立つベンチ。スタンディングオベーションのスタジアム。
日本中がお祭り騒ぎとなった。
最後の最後で期待に応えるイチローのすごさ。

だがイチローの本当のすごさはそこではない。
周囲の全員が歓喜の渦にある中で、ただひとり冷静に、
ガッツポーズをすべきかどうかを考えていたところに彼の真骨頂があるのだ。

「ここで喜んだほうがいいのか、喜ばないほうがいいのか……」
「相手チームにとってどちらがキツいと感じるだろう」

そして、このとき彼は、自分が喜ばないほうが相手が恐怖を感じるだろう、
と判断した、というのだ。
イチローのこうした考えのベースとなっているのは、

「勝って喜ぶチームや、負けて落ち込むチームは怖くない。
それとは逆に、勝っていても冷静なチームや、
負けているのに元気のあるチームが怖い」というものだ。

前者、つまり勝って喜び負けて悲しむチームというのは、
状況に左右され揺れているチームのこと。それは怖くない、とイチローは言う。
真に恐れるのは、勝っても浮かれず冷静で、
負けているのにひるむことなく向かってくるチームだ。

彼らは目先の状況にとらわれていない。
自分たちがやるべきことをやっているかどうかだけを見ているからだ。
それは、先にあげた中央タクシーの宇都宮会長の姿とダブって見える。
分野こそ違え、目の前の状況に左右されずに、
自分の信念だけを見ているという点でみごとに一致する考え方だ。
だからこそイチローは、批判と重圧にも負けずに揺れずにいることができた。

イチローの自分軸は、まったく揺れていなかったのである。

◎リーダーが一喜一憂してはいけない

イチローの考えや自分軸のあり方は、そのままリーダーにも応用できるだろう。
自分のチームメンバーが元気ならOKで、落ち込んでいたらダメ、と思うのは、
相手に振り因されている証拠である。
相手の反応に軸を置かないことが、自分軸を持つことであり、
揺れない生き方につながるのだ。

かつての私は、勝って喜ぶだけではなく、勝って喜ぶメンバーを見て喜び、
負けて悲しむメンバーを見て心が揺れた。
指揮官として、リーダーとして失格だった。

メンバーの顔色で一喜一憂しているような指揮官は、
チームに勝利をたぐり寄せることはできないからだ。

むしろ逆である。勝っても浮かれず、負けても落ち込まない。
状況に左右されない軸をつくることが肝要なのである。

ただし、そこにも落とし穴がある。
勝って浮かれているメンバーたちを見て兜の緒を締め、
負けて落ち込んでいるメンバーを元気づける行動は、
一見すると軸があるように見えて、単に相手に反応しているだけの場合がある。

状態に反応し真逆の戒めや啓蒙を行っているだけかもしれないからだ。
それが、揺れていないようで、実は揺れているのだ。
それでは、相手に迎合してしまっているのと同じだ。

自分軸のように思えても、他人軸の可能性がある。
そこを勘違いしないようにしていただきたい。
そうならないためには、自分の中に確固たるチェックリストをつくり、
OKとNOを出す基準を持つことだ。
その基準のつくり方については、次項以降で紹介する。

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