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11月14日配信 小倉広メルマガvol.294 「何かあったら言ってきて!」と、言う上司は、トラブル対応に追われ続ける。



vol.294「「何かあったら言ってきて!」と、 言う上司は、トラブル対応に追われ続ける。」
出典:成長する人は知っている28の小さなきっかけ


「なんでもっと早く相談してこなかったんだ!」
伊藤マネジャー(仮名) に怒鳴られ、
私はビクッと後ろに下がりました。
そして小さな声で「伊藤さん、いつも忙しそうだったんで……」と
言い訳をしてしまいました。
それが伊藤さんの怒りの火に油を注いでしまったようです。

「言い訳するな! 忙しそうに見えても、上司を捕まえるのが部下の仕事だろう!」
「何かあったら言ってこい、と言っておいただろう! 
もっと早く相談してくれたら、ここまでひどくならずに済んだはずだぞ」
なにしろ、今回のプロジェクトで失敗をしてしまったのは私です。
言い訳をし続けることはできません。
「すみません……」そう謝ってこの話を終えました。

プロジェクトの進行が遅れ遅れになっているのは、
ずいぶん前からわかっていました。
しかし、いくら催促しても、他部署からの資料は出てこないし、
伊藤さん自身も会議に出てくれません。
私は立場上プロジェクト・リーダーという形になっているものの
役職が上のメンバーばかりで、実質的にはリーダーでも何でもない、
と考えていました。

そこで、責任を放棄して、下働きの事務局的動きしかしていませんでした。
言うことを聞いてくれない目上の方々の相手に嫌気が差し、
もう、どうでもいいや、
と半ばリーダーの職を投げ出してしまっていたのです。

そんな苦い思い出があるにもかかわらず、
私は上司という立場になった途端、部下に対して、
かつての伊藤マネジャーと同じ対応をしてしまいました。
「何かあったら、言ってこいよ!」とだけ言い残し、
早めに報告、連絡、相談に来ない部下に怒鳴り散らしていたのです。
「『何かあったら言ってこいよ』そう、言っただろう!」と。

そもそも、部下は上司への報連相が大嫌いな動物です。
皆さんが現在もしくはかつて部下だった頃、上司へ報連相をしたときに、
どのようなことが起きたか覚えていますか?
私は、講演会などでよくこれと同じ質問を受講者の方々へ投げかけます。
「皆さんが上司に報連相をするとどのようなことが起きますか?」と。
するとほぼ100%に近い確率で、このような答えが返ってきます。
「はい。『面倒』なことが起きます!」と。

行動科学マネジメントの世界で、
人の行動を強化する因子を「好子(こうし)」と言います。
たとえば、子どもがお使いをしたらお小遣いをもらえて嬉しかった、とします。
そして「お母さん、僕、もっとお使いに行こうか?」と
積極的にその行動を繰り返そうとします。
この場合、「お使い」という行動に対して「お小遣い」が好子として働いた、
ということができます。

一方で、お使いに行ったら、今度はお父さんから
「そんなことをしている暇があったら勉強しなさい!」と叱られたとします。
すると、お使いをするとろくなことがない、と思い、
子どもはお使いに行かなくなります。
これは「お使い」という行動に対して「父からの叱責」が
「嫌子(けんし)」として働いた、ということです。

先の「報連相をしたら面倒なことが起きる」という体験は、
報連相に対して嫌子として働いている、ということが言えるでしょう。

つまり、ほとんどの部下は報連相をしたらろくなことがない、
という経験を持っており、報連相が大嫌いである、といえるのです。

にもかかわらず、そんな部下に対して「何かあったら言ってこいよ!」と言う
上司はいったい何を考えているのでしょうか?

部下が大嫌いなことを、自主的に自発的にやらせようとする。
そして、一言言っただけで、そのままほったらかしにする。
それは、失敗を自らの手で確定させている、と言っても過言ではないでしょう。

「『何かあったら言ってきて!』。上司はこのセリフを言ってはいけません」
私が講演で繰り返し伝えているメッセージです。
もしも、あなたが私のメッセージに反して
そのセリフを言い続けているとしたら……。おそらくあなたは、
永遠に部下から報連相を受けることはできないでしょう。

なぜなら、部下は「何かあっても」決して「言ってはこない」からです。
そして、ギリギリもギリギリ。もうどうしょうもなくなって、
手遅れになってから上司に報告に来るのです。
かつて、私が伊藤マネジャーからどやしつけられたときのように。

そうではなく、定期的に部下の進捗をフォローするのです。
私がお勧めしているのは、週に1回、仕事の進捗をチェックし
支援する1対1の面談を行うこと。
可能であれば1回1時間、それがムリならば30分、いや、15分でもいい。
一人ひとりに「今週の進捗はどう? 困っていることはない?」と
話しかけるのです。

その際に注意してほしいことがあります。
それは上司が部下を「取り調べ尋問」しない、ということ。
「例の件、どうなっている? なにぃ? まだできていないだとぉ?
この1週間いったい何をやっていたんだ? 昨晩は何をしていた?
おとといは?」

このような面談をしてはいけません。
これは刑事が犯人を追い詰めているようなもの。
これでは、部下のやる気は起きません。
ますます報連相をしなくなるに決まっているからです。

「何かあったら言ってきて……」
このセリフを言っている上司は、部下が起こすトラブルの後始末から
永連に逃れることはできません。
そうではなく、上司の方から情報を取りにいくのです。
ただし、取り調べ尋問のスタイルではなく、部下を助け、支援する、
という視点で面談を行わなければなりません。
かつての私と同じ間違いを繰り返さないためにも。

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