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10月11日配信 小倉広メルマガvol.289 「無理難題が言える関係をつくる」



vol.289「無理難題が言える関係をつくる」
出典:任せる技術

◎任せることは、無理難題を言うこと

上司の仕事は矛盾に満ちている。
そもそも組織とは矛盾のかたまりのようなもの。
短期的業績を求めれば長期的な組織づくりや人材育成はおろそかになる。
逆に長期を優先すれば短期の業績がおろそかになる。

それと同様に、
個人のモチベーションを大切にすれば全体の効果性や効率が低くなる。
全体を優先すれば個人のモチベーションにマイナスの影響がある。
そのような二律背反が無限に存在する。
それが組織というものなのだ。

その矛盾を受け入れ、どちらか一つに偏らず目的を追求していくのが
リーダーシップの働きだ。つまり、組織の矛盾を受け入れ解決していくことこそが
管理職の役割なのだ。

その一部を部下に任せる、ということは、
部下にも矛盾の解決を求めることになる。
これは部下にとっては初めての経験であり大きなストレスとなる。
つまり、部下にとって、上司の仕事を任されるということは、
上司から無理難題を言われるに等しいのである。

ということは、上司が部下に仕事を任せる際には、
無理難題を聞き入れてもらえる関係がなければならない。
無理難題を言える部下でなければ上司は仕事を任せられないのだ。
このことを上司は常に肝に銘じておくべきだろう。

◎信頼関係ができていない部下に無理難題は言えない

もしも、上司と部下の間に十分な信頼関係ができていないままに、
上司の仕事を部下に下ろしてしまったとしたら、
部下は強いストレスとプレッシャーを感じ、
「上司に矢印を向けてしまう」ことになるだろう。

「この仕事、頼むよ。時間がないけど明日までに仕上げてくれない?」
上司からこう無理難題を頼まれた時に、
部下は上司の依頼の正当性を疑ってしまうのだ。
「いきなり今日頼んで明日の締め切りはひどすぎる。
その他にやらなければならない仕事がたくさんあるのに。
この上司は私の立場を何も考えていないのではないか?」
そんなふうに感じてしまうかもしれない。

しかし、彼はそれを言葉にしない。ただおとなしく「わかりました……」と、
黙ってのみ込んでしまうのだ。

しかし、もしも逆に部下とあなたが強い信頼関係で結ばれていたとしたら、
同じ言葉をかけられても部下はまったく違う受け取り方をすることだろう。
「あまり時間がないようだな。きっと、やむにやまれぬ事情があるのだろう。
厳しいスケジュールだが頑張ってみよう。
絶対にムリな仕事を上司が頼んでくるはずがない」

まったく同じ言葉を伝えたとしても、
部下が持っているあなたへの信頼度によって、
受け取り方はかくも変わってくるのである。

僕たちリーダーは、部下に仕事を任せる前に、
十分に部下との信頼関係を築いておく必要がある。
そうでなければ、任せることはうまくいかない。
仕事を任せることがきっかけとなり、
逆に組織が悪い方向へ進んでいってしまうからだ。

◎信頼関係をつくるために

では、部下との信頼関係をつくるにはどうしたらいいのだろうか?
この問題を真剣に論じるとすれば
それだけで十分に本が一冊書けるくらいの情報が必要だ。

それを大胆に捨象して、たった一言で表すならば、
「部下を大切にすること」こそが信頼を築く方法だと言えるだろう。

あなた自身が部下一人ひとりを家族や恋人のように大切に思い、
家族や恋人と同じように接するのだ。
それができれば、部下との信頼関係は深まり、それと逆の行動を取れば
部下との信頼関係は壊れていくだろう。

それは言葉にするのは簡単だが、実行するのは難しいもの。
赤の他人である部下を家族や恋人と同じように思うのは並大抵のことではない。
しかし、絶対に不可能でもないのだ。それを実践している素晴らしいリーダーが
全国に何千、何万といるのは間違いない。

上司と部下が強い信頼で結ばれているとしたら。先にあげたような問題は起こらず、
上司は安心して部下に仕事を任せられるようになるだろう。
そして、任せた仕事の成功率が格段にアップするのだ。

この考え方を逆手に取れば、誰に仕事を任せればうまくいくかがよくわかるはずだ。
そう、能力がある部下に任せるのではなく、
信頼関係ができている部下に任せる方がうまくいく。
そう理解してもらえばいいだろう。

もちろん、一番いいのは、一人残らず部下全員と強い信頼関係で結ばれていること。
しかし、そこまで到達していないとするならば、信頼関係によって
仕事を任せる相手を決めるという視点を持っておいた方がいいだろう。
それくらいに信頼関係は大切なのだ。

たくさんの部下と信頼関係がある上司は、たくさんの選択肢を持っている。
逆にわずかな部下としか信頼関係が築けていない上司の打つ手は
限られることだろう。

このように上司と部下の信頼関係は、仕事を任せる際に大きな制約事項となる。
その意味でも、
上司は日頃から部下との信頼関係づくりを大切にしておかなければならないのだ。

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