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8月15日配信 小倉広メルマガvol.281 居酒屋で店員の接客にクレームをつけている人は、経営者にはなれない。



vol.281「居酒屋で店員の接客にクレームをつけている人は、経営者にはなれない。」
出典:成長する人は知っている28の小さなきっかけ

 近所にある行きつけの大衆居酒屋で、私はひとり機嫌良く
ビールを飲んでいました。
つまみは、刺身の盛り合わせと、おひたし、野菜の煮物です。
どこにでもある何の変哲もない料理ばかりですが、
これがとてもおいしいのです。
そして値段は大衆的。いつも常連さんで満席のこのお店。
当然といえば当然でしょう。

 と、そこへ一見(いちげん)さんらしき男性二人組が入って来ました。
そして横柄な態度で「生ふたつ!」と大声をあげました。
その後も二人組は辺りをはばからず、大声で話しています。
また、店が混んでいるにもかかわらず椅子の上に荷物を置き、
傍若無人な態度で酒を飲み始めたのです。
私や数名の常連さんは視線を合わせて少し
困ったような表情を共有しました。
まあ、こういう人もいるよね。そんな感じです。

 お待たせしました!
店員さんがこの二人組に料理を届けたときのことです。
ドン! お皿を置くときに大きな音がしました。少し乱暴かな。
私も思ったそのときに、この二人が、店員さんに説教を始めたのです。
「おい、おまえ。なんだ! その皿の置き方は!」
「え? はい? すみません」店員さんは何のことだかわからずに、
しかし、とりあえずお客様なので謝った。そんな返答をしたのです。すると。
「おい、客に対して何だ? その応対は? 
自分は悪くない、とでも言いたいのか?
文句を付けているオレの方が悪いとでも言いたいのか?
  ああ? 反省はないのか?」
 矢継ぎ早に店員を責め立てます。
 それを見かねて大将が割って入りました。
まあ、お客さん。何があったかわかりませんが、
勘弁してやってくれませんか。まだ若いアルバイトなんでね。
すると、その二人組はさらに大将を責め立てます。
「おまえのところは店員の教育もできないのか?」
 それからも延々大将にからみついてきます。すると。
日頃温厚な大将が態度を豹変させました。
「お客さん。勘定はいらないから今すぐ店を出て行ってくれ。
もう二度と来るな!」
 二人組は驚き、大将の気迫に押されてすごすごと店を後にしました。
その間、店中はシーンと静まりかえっていました。
そして二人が出て行った瞬間に、常連さん同士の間で、
どっと笑いが起こりました。
大将が言います。

「ときどきいるんだよね。ああいう、ちょっと勘違いしたお客さんがね。
そりゃあうちの接客はたいして褒められるもんじゃあないけど。
何しろ大衆居酒屋だからね。一流レストランと違うんだから。
利益だってほとんど取ってないし、人件費も安い。
そんなに一流の接客を求められても、それじゃあやっていけないんですよ」
 大将は私の目を見てこう続けます。
「もし、ちゃんとした接客を求めるのなら、もっと高い店に
行ってくれないですかね。そしたら、一流の接客をしてくれますよ。
店員教育にお金をかけるだけ余裕があるもの。
もし、それでたいした接客じゃなかったら、そのときはちゃんと怒ればいい。
うちみたいな大衆店で、それをやられちゃ、ちょっとお門違いってもんですよね。
そう思いませんか?」
 私は、まさにその通り、とうなずきました。

 高級な食材に高い値段がつくように。
一流のサービスにはそれ相応の値段がつくのが当たり前。
それが資本主義のルールです。もちろん、あえてそれに逆らって、
格安店が一流のサービスを目指している店もある。
しかし、それはあくまでも例外のこと。
それをあらゆる店に求めることは間違っている、
と言えるでしょう。

 近頃はやりのLCC(格安航空会社)。
スカイマーク社は「サービスコンセプト」の中で、大胆にも
以下のような方針を顧客に宣言しています。
「荷物の収納は手伝わない」
「丁寧な言葉使いはしない」「乗務員の服装や髪型は自由にさせている」
「機内での苦情は一切受け付けない」。
 これまでの丁寧な接客が当たり前だと思っていた人にとっては、
びっくりするような宣言です。
しかし、私はそれを聞いたときに当たり前のことだと思いました。
もし、それがイヤならば高額な航空会社に変えればいいだけのこと。
おそらくは必要最低限の人数しか雇えず、
接客の教育訓練に割くお金も時間もないからこそ成り立つ格安運賃。
そこに一流のサービスを求める方が間違っていると思うのです。

 大衆居酒屋や格安航空会社で一流のサービスを求める人は経営感覚がない。
一般常識がない。自分の都合しか考えていない。私はそう思います。
「高い値段は払いたくない。格安料金しか払いたくない」と言いながら一方で
「一流のサービスをしてくれ」というのはムシのいい話です。
しかし、私たちは無意識のうちにこれをやってしまうものなのです。
 先日、私は一流レストランの3分の1の値段で一流並みの料理を出すとして
大繁盛している店を予約し、15分遅れて店に入りました。
すると、驚くことに、既に席はない、とのこと。
あわてて携帯を見ればどうやら店から着信があった模様。
店員さんは「遅れたから他のお客さんを入れました」と平気な顔で言うのです。
 私は一瞬激怒し「ありえない!」と叫んでしまいました。
そして、すぐに反省しました。
文句があるなら高級店へ行けよ、と。
そして、空いていた立ち食いの狭いテーブルで、食事をすることにしました。
私が座るはずだったテーブル席で悠々と食事をしている数組の
お客さんを羨ましそうに眺めながら……。
しかし、私の機嫌はメニューを見てすぐに直りました。
なにしろ格安でおいしそうなメニューが並んでいるのですから。
文句を言う方が間違っていたのです。

~小さなきっかけ~
大衆居酒屋の接客には腹を立てない
お店によってサービスが異なることを知ろう

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