作家、講演家、心理カウンセラー

小倉広オフィシャルWebサイト

小倉広事務所 HOME

12月18日配信 一偶を照らす vol.4『上司の話が伝わらない3つの理由。』



「いやぁ、小倉さん、何度話しても部下に話がまったく伝わらない。やっぱり、伝え方が足りないのですかねぇ」

コンサルタントの私は、経営者の方からこのような相談をよく受ける。そして、そのたびに思う。「だから、伝わらないんですよ……」と。

上司が必死に伝えたいと思う、会社や部署の方針、戦略、戦術、ルールなどなど。上司は「伝える」こと、すなわち「話す」ことしか考えていない。

話す量が足りないのではないか……?話す表現が下手なのではないか……?などなど。しかし、「伝わらない」理由がそれ以外にある、などと考えたこともない人がほとんどではなかろうか。

私は、2300年前にギリシャの哲学者アリストテレスが提唱した「人を動かす3要素」にそのヒントがある、と思う。その3つとは……

(1)エトス(信頼・倫理観)
(2)パトス(感情・情熱)
(3)ロゴス(論理・理屈)
である。この3つ共になければ、人は動かない、とアリストテレスは喝破したのだ。私は、まさにその通りだと思う。

たとえば、(3)論理がいくらしっかりしていても、その根底に情熱や思い、つまりはパトスがなければ、相手の心を揺さぶることはないだろう。同様に、話し手たる部下と上司の間に信頼関係がなければ、相手は納得してはくれまい。

にもかかわらず、「なぜ、伝わらないんだ?よぉーし、30Pの資料をつくって、ロジカルに説明、説得してやれ!」などと、トンチンカンな頑張りをしている上司がいかに多いことか。私は彼らをロゴス(論理)馬鹿、と呼んでいる。

また、ロゴス(論理)馬鹿とは違う種類の上司もいる。例えば、支離滅裂で論理が破綻している文章を話ながらも、身振り手振りと表情で情熱を込めて話し続けるパトス(情熱)馬鹿も職場によくいるタイプだ。

彼らは、自らの情熱や思いは発するものの、部下たる相手のの思いを受けとめようとしない。つまり、パトスは単なる一方通行なのだ。本物のパトスはそうではない。相手のパトスを引き出す。それが本当だ。

また、パトス馬鹿にありがちなのは、エトス(信頼)を軽視していること。自分の情熱ばかりを先行させる人は、人との間の信頼関係がうまく築けていないことが多い。独りよがりの人間に信頼形成はされない。相手つまり部下を尊重し、部下の自己重要感を満たさなくては、エトス(信頼)を築くことはできないのだ。その意味で、パトス馬鹿は、エトス(信頼)が欠如していることが多い。

また、それとは違うタイプでエトス(信頼)馬鹿も少数ではいるが、見かけたことがあるだろう。人のお世話をし、人情に篤く、優しいエトス馬鹿。しかし、彼は、論理的に話すことが苦手だし、情熱や思いを込めて話すことも苦手な不器用なタイプだ。残念ながら、彼も人を動かすことはできない。つまり、部下に「伝わらない」のだ。

このアリストテレスが提唱した(1)エトス(信頼・倫理観)(2)パトス(感情・情熱)(3)ロゴス(論理・理屈)。3つのフレームに従って、上司が部下とどのような関係を築き、話していけばいいのかをじっくりと書き下ろしたのが、拙著「なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか?」(ソフトバンククリエイティブ)である。
http://ow.ly/gbnca

先週末から順次書店に並び始めている。お陰様で出足が好調なようだ。「部下に話が伝わらない!」とイライラしている上司の皆さん。エトス馬鹿、パトス馬鹿、ロゴス馬鹿、の話に「ドキリ!」とした皆さん。ぜひご一読いただきたいと思う。

Top