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生き方を学ぶ読書会 人間塾課題図書一覧


第1・2回 『修身教授録』 森信三 (致知出版社)

人間塾歴代課題図書の圧倒的第一位。人間塾と言えば「修身教授録」というほど、塾の背骨となっている、森信三の代表作である。昭和12~14年に大阪天王寺師範学校で行われた講義の筆記録を編纂したもの。イエローハット創業者の鍵山秀三郎、SBIホールディングス社長北尾吉孝、小宮一慶、リブセンス社長村上太一なども本書を愛読書としてあげている。もしも、私が「生き方」「人間力」についての本を一冊だけ挙げよ、と言われれば、迷わず本書を挙げるだろう。それほど価値がある本だと思う。本書をの魅力は、心に突き刺さる平易な直言にある。しかも、その言葉の背景に深い人間愛がにじみ出ており人間力が伝わってくる。ビジネスマンにぜひ読んでほしいのは「下座行」だ。部下心得としてこれほど的を射た表現はない。万人必読の書だ。


第3回 『真理は現実のただ中にあり』 森信三 (致知出版社)

森信三三部作の一作。昭和30年~53年の間に、小学生、中学生、大学生、教職員、保護者などに向けた語った講話録を編纂した本。「人生における深刻な経験は、たしかに読書以上に優れた心の養分と言えましょう。だが同時にここで注意を要することは、われわれの日常生活の中に宿る意味の深さは、主として読書の光に照らして、初めてこれを見出すことができるのであって、もし読書をしなかったら、いかに切実な人生経験といえども、真の深さは容易に気付きがたいと言えましょう」は読書についての本質をズバリついている。「諸君!! 例外をつくったらだめですぞ。今日はまあ疲れているからとか、夕べはどうも睡眠不足だったとか考えたら、もうだめなんだな。例外をつくったらもうやれん」96歳で生涯を閉じるまで熱く語り続けた巨人の言葉が胸を打つ


第4・5回 『いかに生くべきか 東洋倫理概論』 安岡正篤 (致知出版社)

人間塾の記念すべき第二冊目の課題図書。安岡哲学の骨格となる書籍。しかし、本文中にも示した通り、本作を読む順番はもっと後にすべきであったと考える。安岡正篤に対する食わず嫌いを起こさぬためにも、著者晩年の70代の講話録から読み始めることを強くお勧めする。また本書は、四書(大学、論語、孟子、中庸)を読む前のガイド本というよりは、四書を読んだ後のより理解を深める書物と捉えた方が現実的であろう。本書には四書や菜根譚をはじめとする人間塾課題図書に指定された書物からの引用が豊富にあり人生を青年期、壮年期、老年期に分けて俯瞰して解説してある。私はこの書籍で「造化」(天地の万物)という言葉を初めて知った。なお本書の現代語訳として「人間としての生き方」があるが、汗をかきながらも本書にチャレンジをし読みこなしていただきたい。


第6回 『運命を創る』 安岡正篤 (致知出版社)

読みやすい講話録。「えびはなぜめでたい席に供されるのか?えびの如く脱皮せよ」や「主体性を回復するための十八箇条」「酒の飲み方で人を見るー三菱流人物鑑定法」など。とっつきやすいタイトルから入り、人生の深淵が語られている。また、同時に著者が起草者として関わった終戦の詔勅の裏話や、人間学の欠如が招いた満州事変、明治維新を成功させた三つの力、アメリカの占領政策ー3R・5D・3S政策など、教科書に書かれていない歴史の本質を知ることもできる。本書のテーマでもある「運命」について「運」とは動くことであり、運命とはダイナミックなものである。あらかじめ定められ変化しない「宿命」とは異なり「運命」はその複雑な因果関係を探り操作し、自ら変化させ切り拓くものである、これを「立命」という、との啓示は正に目からウロコであった。


第7回 『南州翁遺訓』 松浦光修 (PHP研究所)

人間塾課題図書の中でのMy Favorite をあげるならこの一冊だ。本書は西郷率いる新政府軍と戦い敗れた庄内藩の藩士たちが、本来であれば賊軍として辱めを受け処刑されるところを寛大な処置を受け、さらには武士の魂である帯刀を許され、礼儀正しく接せられたことに感動し西郷のもとを訪れたのが起源となっている。本来敵方であったはずの彼らが西郷に自ら教えを請い、風呂敷に本を背負って全国で売り歩いたとされる。このエピソード自体が西郷という人間の大きさを表している。有名な「敬天愛人」をはじめ珠玉の教えの詰まった一冊。


第8回 『留魂録』 松浦 光修 (PHP研究所)

30歳という若さで処刑されこの世を去った吉田松陰。「身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置まし 大和魂」の有名な句そのままに国を憂い、命をかけて行動し続けた松蔭の波瀾万丈な人生と死生観が「溜魂録」だけでなく、松蔭の書簡や年表などの資料と共に描かれている。高杉晋作や久坂玄端、伊藤博文、山県有朋ら、数多くの明治維新の立役者を生んだ松下村塾にて教鞭を取るだけでなく、現代で言えばクーデターに当たるような暗殺計画や密航などを繰り返し、牢獄に捕らわれる。しかし、その過激な行動の原動力は決して私欲ではなく、国を憂える思いにあることが切々と訴えられ、私たちの胸を打つ。20代の若さで国を動か、後進の人生に大きな影響を与えた吉田松陰。その死生観が迫ってくる。


第9回 『二宮翁夜話』 二宮尊徳 (中公クラシックス)

二宮尊徳と言えば薪を背負いながら読書をしている銅像が有名だが、単なる勤勉以上の大切な教えを本書は指し示してくれるだろう。幕末に活躍した尊徳は現代で言えばさしずめ企業再生、自治体再生のプロと言えるだろう。飢饉で苦しむ村を「勤労」(ものをつくること)「分度推譲」(分をわきまえ余剰を蓄えに回すこと)「積小為大」(小さな事を怠らず務めれば大きなことを為す)「報徳」(金のためではなく恩に報いるために働く)などを重んじ、次々と村を立て直していった。また、農民だけでなく領主にも財産を投げ出すことを求め、リーダー論としても読める。「報徳記」もお勧め。


第10回 『言志四録』 佐藤 一斎 (著), 岬 龍一郎 (翻訳) (PHP研究所)

時の首相小泉純一郎氏が「米百俵」のスピーチに引用し、当時外務大臣だった田中真紀子氏に同氏の書を渡した、として知られる佐藤一斎の代表的著作。リーダーのためのバイブルとも呼ばれている。佐藤一斎は現代で言えば、東京大学の総長にあたる江戸幕府末期の儒教の研究者である。その門下生は六千人とも呼ばれる。江戸幕府の儒官として朱子学が専門であるが、陽明学に対する造詣も深く、その門下生である佐久間象山の高弟には、勝海舟、吉田松陰、小林虎三郎なども名を連ねる。佐藤一斎42歳~82歳までの総数1,133条。四十年に及ぶ大作である。リーダーは必読だろう。


第11回 『菜根譚』 洪自誠 (講談社)

明の時代の供自誠。「君子かくあるべし」と修己治人を説く儒教、「今のままでいいんだよ」と知足を説く道教、そして禅の教えが渾然一体となり、人生の道を説く希有な名著。松下幸之助、田中角栄、川上哲治、野村克也など偉人・名経営者がこぞって愛読書に挙げる。「人に道を譲ることこそ、もっとも安全な世渡りの極意」「至る所に人生の楽しみはある」「華美は淡泊に及ばない」「人格が主人で能力は召使いにすぎない」「他人の過ちには寛大であれ。しかし、自分の過ちには厳しくなければならない」など珠玉の教えが詰まっている。270ページとボリュームがあるが、漢文、読み下し文、現代口語訳に解説が加わっているためであり、それほどハードルは高くない。30万部のロングセラー。


第12回 『代表的日本人』 内村鑑三 (岩波文庫)

1894年日清戦争開戦の年に内村鑑三により執筆が開始され、1908年(明治41年)日露戦争後に刊行された英文著作の翻訳である。小国日本が大国との戦争に相次いで勝利し、一躍世界から注目を集めたことにより、内村鑑三が日本の素晴らしさを世界に訴えるために筆を取ったと言われている。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の五人が、様々なエピソードと共に紹介されている。大変平易な文章で読みやすく、ページ数も208ページと少なく、古典に関心を持つための入門書として大変優れている。一冊目としてお勧めである。


第13回 『人生二度なし』 森信三 (致知出版社)

森信三三部作の一作。昭和38年、若者に向けて行われた講演会の講話録で大変読みやすい。森信三を学ぶのならば、本書もしくは「真理は現実のただ中にあり」から始めるのが良いだろう。「学歴偏重社会の中で、悩みながら働いている若い人たち」を対象に書かれている。「秋になって実のなるような果樹には春、美しい花の咲く木はない」「どうせやるなら覚悟を決めて10年やる。すると20からでも30までにはひと仕事できるものである。それから10年本気でやる。すると40までに頭をあげるものだが、それでいい気にならずにまた10年頑張る。すると、50までには群を抜く。しかし50の声を聞いた時には、大抵のものが息を抜くが、それがいけない。『これからが仕上げだ』と新しい気持ちでまた十年頑張る・・・・・・」など珠玉の言葉が熱く、わかりやすく語られている。


第14回 『父親のための人間学』 森信三 (致知出版社)

森信三は「父親は人生で3度子どもを叱るか、まったく叱らないか」との態度を確立すべきである、と述べている。また、躾けや子どもの教育のみならず、職場での人間関係や、読書、健康管理、財の保全と蓄積、地位と名声、逆境と天命、親の老後と自分の老後など、いわば「男」としての生き方の指南書と呼んでも過言ではない内容である。「夫婦は二つの円が互いに半分くらい重なり合った二つの円のようなものであり(中略)他の部分はお互いに理解できない部分だということを改めて知る必要がありましょう」「夫婦のうちどちらかエライ方が、相手をコトバによってなおそうとしないで、相手の不完全さをそのまま黙って背負ってゆく。夫婦関係というものは結局どちらかがこうした心の態度を確立する外ないようですね」の2つにシビれた。深い。


第15回 『論語物語』 下村湖人 (講談社学術文庫)

古典の中の古典。最も知名度の高い「論語」にチャレンジするにあたり、準備運動として小説仕立ての本書を課題図書とした。しかし、その考えはある意味間違いであった。本書は論語の解説書としてだけでなく、本書それ自体の価値が極めて高い素晴らしい書籍であったからだ。それもそのはず。著者の下村湖人は「次郎物語」を初めとする数々の名作を残し、本書のファンも多い。本書で描かれる孔子は完全無欠な聖人ではない。愛弟子死に涙し、弟子の過ちを厳しく叱責する。そして迷う。人間・孔子が生き生きと描かれている。また、弟子一人一人のキャラクターの書き分けも秀逸で思わず引き込まれる。


第16回 『論語』 金谷治・訳 (岩波文庫)

言わずと知れた古典の中の古典。「四書」として知られる、孟子、大学、中庸の筆頭として抜群の知名度とファンを持つ。孔子没後紀元前二世紀の漢の時代に門人たちが編纂したと言われているが、その真偽は不明である。論語には数え切れないほどの解説、訳が存在し、訳者によって大きく解釈が異なる句もあるため、現代語訳者の選択は非常に重要となる。本岩波文庫版の金谷治氏の訳および解説は「簡便的確」を旨とし、冗長な意訳や原文のニュアンスを壊すことのないシンプルな訳が特徴であり、初めて「論語」を読む人にとって適切ではないか、と考える。


第17回 『孟子』 金谷治・訳 (岩波新書)

人間塾課題図書として指定した「大学」「論語」「中庸」と並ぶ「四書」の一冊。とはいえ「四書」のうち本書のみがいわゆる 「解説本」であり孟子オリジナルはわずかに触れられているだけである。私が課題図書を選定する際に基準の一つとしているのが「上下巻」に分冊されていない一冊の本、というものがあり「孟子」に限り、その条件を満たさなかったため苦肉の策として、本書を選んだ。しかし、えてして「理想論すぎる」と批判されがちな「孟子」について、時代背景の解説や、孔子、告子、荀子、荘子、韓非子との比較など、儒教を俯瞰して見ることが出来る良書である。本書を先に読んでから「孟子」のオリジナルを読むか、逆か。いずれにせよ、併読されることをお勧めする。吉田松陰が獄中で看守と囚人を相手に「孟子」を語った「講孟箚記」もお勧め


第18回 『大学・中庸』 金谷治 (岩波文庫)

「大学」と「中庸」は「論語」と「孟子」と合わせて「四書」とされ、儒教の代表的経典として広く読まれてきた。「大学」は孔子の門人曾子の門人子思の作、そして子思の門人に学んだのが孟子である、と言われ、儒教の正統的な著作として読み継がれてきた。特に「大学」は「初学入徳の門」として最初に読むべきとされ「中庸」は最も深遠なる書として「四書」の最後に学ぶべき、と言われている。しかし、作者の正誤や「四書」の正当性については諸説があり、いまだ解明はされていない。だが、著名な「論語」「孟子」と共に学ぶべき価値は十分にある。ページ数も少なく手に取りやすい著作である。


第19回 『自分を育てるのは自分』 東井義雄 (致知出版社)

「君たちはどう生きるか」と同じように中学生に向けた書かれた書。「いのちの教え」の東井義雄の名作である。中から一遍の詩をご紹介したい。脳性麻痺のきみちゃん17歳~ひとつの願い~「お便所に一人でいけるようになりたいのです それば私の願いです たった一つの願いです 神様、神様がいらっしゃるなら私の願いを聞いて下さい あるけないこと 口がきけないこともがまんします たった一つお便所に 一人で 一人で行けるようになりたいのです お願いします」この詩を読んで何を感じるであろうか。人間塾の塾生が「自分の子どもに読ませたい」「子どもの頃に読んでおけば良かった」と語るのもうなづけるのではなかろうか。私も思春期で悩む姪っ子に贈った本である。


第20回 『般若心経入門』 ひろさちや (日本経済新聞社)

平易かつユニークな関西弁で語りかけてくる、ひろさちやの代表作。「観自在菩薩。行深波羅密多時・・・・・・」から始まる般若心経は文庫本の見開き2ページに収まる短いお経である。しかし、そこで描かれている世界は宇宙のすべてを表す深い深い教えだ。その深さを実に明快に語る本書はなんとも小気味よい。また、般若心経のみならず仏教全般についての記述も多く「お布施とは、もらった方が御礼を言うこと」「ケーキを一人で食べるよりも二人で食べた方がおいしいねという心」など目から鱗の例えが次々と出てくる。ゴム紐の物差しを持つ私たちを救ってくれるに違いないだろう。


第21回 『伝習録』 王 陽明 (中公クラシックス)

明の時代に従来の朱子学を「官僚のための儒教」「読書中心の学問」と批判して起きた陽明学の提唱者、王陽明の代表的著作。「民衆のための儒教」「日常生活の中で行う鍛錬」を唱え、有名な「致良知」(自己の道徳本性をやみがたく発揮する)「知行合一」(知識と行動は一つでありいずれかが先や後ではない)を唱えた。西郷隆盛、吉田松陰、中江藤樹など陽明学に心酔した偉人は多く、日本人の精神性と親和性があると言われている。しかし、人間塾課題図書の中でも難易度は相当高く、大学、論語などの後に読んだ方がいいかもしれない。


第22回 『老子』 金谷治 (講談社)

「老子」は「論語」と並ぶ中国の代表的古典である。「足るを知るは常に足る」「上善水の如し」に代表されるように、「修己治人」の「論語」と対局にあると言われている。まじめでそつがなく決まり事を守り、身だしなみも整えている「論語」「孟子」を学ぶ「儒家」に対して、「老子」「荘子」を学ぶ「道家」は服装やきまりに対して無頓着でずぼらであるが、大らかな心を持ち、しかし大事なところだけは外さない。そんな姿が目に浮かぶ。「儒教」と「道教」対比しながら読んでほしい。私は「朝孔子、夜老子」と言う考えを提唱し、対局にある両者を両立する生き方が理想と考えている


第23回 『論語の活学』 安岡正篤 (プレジデント社)

昭和42年、著者70歳に達した時の講義録である。歴代宰相の顧問を務め、日本の歴史の節目に関わってきた人間知にあふれた著者をして冒頭このような言葉が述べられる。「人間というものは自分はわかったようなつもりでも、なかなか本当のことがわからぬものである、ということが論語に微して吾れ自らしみじみ感ぜられるという自分の体験をお話する」とある。この言葉こそまさに、孔子による「これを知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす、これ知るなり」そのものだろう。本書には普通に論語を読んだだけではわからなかったことが易しく解き明かされている。それは「利の本は義である」や「時」「省」の「真意」として語られたり、「暁」「悟」「忠」と「恕」など漢字の成り立ちから語られたり、と様々である。「論語」の解説書としてお勧めである。


第25回 『勇気づけて躾ける』 ルドルフ・ドライカーズ (一光社)

アドラー心理学を体系化しプログラムを開発したアドラーの高弟ドライカースの書。初版から50年を経過してなお色あせることのない子育ての名著。500ページ近い大作ながら、ほとんどは子育ての具体的ケーススタディー。「子どもが騒いだ時にどうするか?」「片付けをしない時にどうするか?」などの具体例に対してアドラー心理学の知見から解説し、さらに具体的対策が書かれている。単なる子育て本としてではなく、アドラー心理学を学ぶ者にとっても、大いなる啓示を与えてくれるに違いない。アドラー心理学を学ぼうと志す者にとっての入門書としても有効である。


第26回 『凡事徹底』 鍵山秀三郎 (致知出版社)

「10年、偉大なり。 20年、恐るべし。 30年、歴史になる。50年、神の如し。」などの名言で有名なカー用品販売会社イエローハットの創業者鍵山秀三郎氏の代表作。掃除一筋50年のまさに「神」が書いた珠玉の名言、エピソードが山のように書かれている。「心を取り出して磨くことができないので目の前にあるものを磨くのです」「幸せになる人というのは、よく気づく人である。掃除をしてると細かな汚れ等によく気がつく。だから掃除をすると人生においても様々なことによく気がつく」「大きな努力で小さな成果を」平易な言葉に深い哲学が宿る。


第27回 『個人心理学講義 生きることの科学』 アルフレッドアドラー (アルテ)

アドラーの講話録。第二次世界大戦の開戦と共にナチズムの台頭によるユダヤ人迫害を恐れたアドラーは活動の拠点を次第にアメリカに移していった。本書はアドラーがアメリカでの定期講演を始めて三年後の1929年に出版された英語のみによる初めての著作。アドラー心理学の主要なテーマを広く網羅し、かつ、比較的文章が平易であるため、入門書として読みやすい部類に入る。(といっても難しいが)アドラー初心者には、事前に拙著「人生に革命が起きる100の言葉」や岸見一郎氏の「嫌われる勇気」の併読をお勧めする。


第28回 『武士道』 新渡戸稲造 (岩波文庫)

新渡戸稲造が1899年、文明開化の最中に海外へ向け英文で著した「Bushido : The Soul of Japan 」の日本語訳。ルーズベルト、JFケネディーなど歴代の大統領などに読まれ、世界中に大きな影響を与えた。武士道を構成している要素「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」について書かれている。外国人に日本文化を理解してもらうことが目的であるため、キリスト教との比較や欧米書物からの引用も多く、欧米文化の知識がないと理解しづらい面もあるが、曖昧さを廃し理路整然と書かれているため理解しやすい。私の記憶に残っているのは「日傘」のエピソード。女性宣教使が炎天下、歩いている時に知り合いの男性がさしていた日傘をわざわざ下ろして会話した。これが日本人の考える礼儀である。という下り。わかりやすい例えだ。


第29回 『性格の心理学』 アルフレッド・アドラー (アルテ)

米国で最も売れたアドラーの書「人間知の心理学」の第2部「性格論」を別冊でまとめたもの。ウィーンで行われた講演をとにしている。本書は「攻撃的な性格特徴」を虚栄心、嫉妬、羨望、貪欲、憎悪からなるとし「非攻撃的な性格特徴」を控え目さ、不安、臆病、適応不足などからなると表現している。そして、怒り、悲しみ、不安などは「他者を分離させる」情動であり、喜び、同上、羞恥心などを「他者と結びつける情動」であると定義している。前半の著「人間知の心理学」で触れられている「共同体感覚」と併せてお読みいただきたい。


第30回 『きけわだつみのこえ』 日本戦没学生の手記 (岩波文庫)

第二次世界大戦末期に戦没した学徒兵の遺書を集めた遺稿集。1949年刊行。「わだつみ」とは海神を意味する日本の古語。現在は戦没学生を現す言葉として使われる。「お母さん、とうとう悲しい便りを出さねばならないときがきました。・・・ほんとに私は幸福だったです。・・・母チャンが私をたのみと必死でそだててくれたことを思うと、何も喜ばせることが出来ずに、安心させることもできずに死んでゆくのがつらいです」このように胸を打つ叫びの遺書がこれでもか、と並べられている。読みながら驚くのは当時の学徒たちの驚くべき博識ぶりと国を思う意識の高さだ。彼らが10代、20代の若さで空しく散っていったことを思うと残念でならない。「夜と霧」と併せ戦争の悲惨さ、狂気、その中でも気高く生きる人間の力を学ぶ必読の書である。


第31回 『夜と霧』 VEフランクル  (岩波文庫)

本書は自らユダヤ人としてアウシュビッツにとらわれ、奇跡的に生還した著者の「強制収容所における一心理学者の体験」(原題)である。「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は1956年8月の初版刊行と同時に大ベストセラーとなり、これまでに600万冊を超える「歴史上最も読まれた十冊」の一冊でもある。「本の読み方・選び方」で触れたが、本書は旧版と新版がある。私のお勧めはあえて旧版だ。300円少し高いが、新版にはない豊富な写真やデータ、資料が掲載されており言葉だけでは伝わらない人間の醜さと気高さが写真から伝わってくる。死ぬまでに読みたい一冊。


第32回 『福翁自伝』 福沢諭吉 (岩波文庫)

福沢諭吉の自伝である。個人の「独立自尊」から始まり、国の「独立自尊」をも唱導する立場になっていく諭吉の人生がドラマティックかつ人間臭く描かれている。スマイルズの「自助論」と同時代に出版されアジアの小国が欧米列強に伍して「自立」していく気概が文面からあふれている。単なる四角四面のまじめな人物としてではなく、学生時代の喧嘩や盗みなども描かれ、人間・福沢諭吉が浮き彫りになっていく。本書は、諭吉が渡米した際に「フランクリン自伝」を読み込んだ後に書かれた、と言われ、ベンジャミン・フランクリンの生き様とも重なる部分が見え、人間塾ならではの関連づけた読み方が楽しめる。


第33回 『自助論』 サミュエル・スマイルズ (知的生き方文庫)

「天は自ら助くる者を助く」という有名な言葉から始まるサミュエル・スマイルズの世界的名著。スマイルズは当初医師であったが1858年に本書が世界的なベストセラーとなってから執筆に専念するようになった。福沢諭吉による「学問のすすめ」同じ時代に販売され日本で100万部を超えるベストセラーになった。他に「向上心」などの名著がある。自助とは英語の “ Self-Help “から来ており「人に頼らず自分で自分の運命を切り拓く」ことである。本書には数え切れないほどの人物やたとえ話、そして名言が盛り込まれておりちょっとした「名言集」としても重宝する。死ぬまでに読みたい本の一冊だろう。


第34回 『学問のすゝめ』 福沢諭吉 (岩波文庫)

「天は天の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言えり・・・・・・の有名な一文で始まる名著。しかし、この言葉が一人歩きし、内容が誤解されているのではないか?と私は思う。おそらく諭吉翁が言いたかったのは、その次の一文だ。「その人に学問の力あるとなきとによりてその相違もできたるのみにて、天より定めたる約束にあらず」「ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」まさに「学問のすすめ」である。と同時に、本書は、「自立のすすめ」としても読め、国民と国家の関係や法治主義国家の理想も語られている。人それぞれが責務を全うし、自立していかねばならない。国民の自立が国家の自立につながる、というメッセージを私は受け取った。「福翁自伝」との併読をお勧めする


第35回 『それでも人生にイエスという』 VEフランクル (春秋社)

ナチスの強制収容所で奇跡的に生き延びた体験を描いた書であり、同時に「歴史上最も読まれた十冊」のうちの一冊であるとある「夜と霧」の著者にしてロゴセラピーの提唱者、心理学者フランクルの代表作。収容所から解放された翌年にウィーンの市民大学で行った講演録である。ところどころに、収容所での生々しい体験が述べられる初期の著作でありながら、その後の理論の多くを包含している。「人生に意味を問うな。人生から意味を問われているのである」というコペルニクス的転換は大きな驚きを与えてくれる


第36回 『森信三講録 西郷南洲の遺訓に学ぶ』 森信三 (致知出版社)

人間塾の課題図書ランキングで上位に入る「南州翁遺訓」を同じくランキング1位の「修身教授録」の著者である森信三が解説する、という垂涎の著作。日中戦争が勃発した時代に、旧満州国新京の建国大学教授就任中の森氏が帰国した際の講話録である。「為政」(政治を司る)と「立教」(人間教育)の両面に渡り論ぜられている。西郷隆盛の有名な「敬天愛人」についての森信三の言葉が深い。「絶対(天)を相手にして絶対(天)に帰し、絶対(天)に自己をささげる。そこではじめて相対的な人情(人)の離反合不合ということによって一々自己が左右されることがなくなる」。深い。


第37回 『子どものライフスタイル』 アルフレッド・アドラー (アルテ)

フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨人アドラーによるカウンセリング症例集。ニューヨークの新社会学校で行われた公開カウンセリングの速記録として1930年に出版された。問題を抱えた子どもたちの行動や生育環境などと共に、アドラーによる切れ味鋭い助言が書かれている。アドラーの著作は、格調高く哲学的である反面、どうしても抽象的になってしまいがちだ。それを補うために、具体的なカウンセリング症例集である本書を人間塾の課題図書として選択した。入門書などを骨組みとして読んだ後に肉付けとして読むことをお勧めする


第38回 『正法眼蔵随聞記』 水野弥穂子訳 (ちくま学芸文庫 )

私が「死ぬまでに読みこなしたい」と思っている大作、曹洞宗の開祖・道元禅師による「正法眼蔵」の最良の入門書と言われるのが本書である。道元禅師に影の形に添うごとく参侍し、のち永平二世を嗣いだ懐弉禅師が随侍当初四年間の師の教えを、聞くにしたがって書きとめたものが本書である。しかし、入門書だからといってバカになどできない重厚さがあり、本書単独でも十分に名著と呼ばれるだけのことはある。水野弥穂子の訳や解説の評価も高く、底本とする長円寺本の適切さも含め、同書の決定版との誉れが高いのが本書「ちくま学芸文庫」版である。本書を含め「臨済録」「無門関」など、禅の教えは私にはまだ十分な理解に至っておらず、本書を読んだ時も理解度は浅いままであった。引き続き「禅とは何か?」を学びつつ、本書に立ち戻ってきたい。


第39回 『フランクリン自伝』 フランクリン (岩波文庫)

アメリカ建国地の父であり、独立宣言書起草委員でもあったベンジャミン・フランクリンの自伝。私たちにはむしろ凧を使った実験により稲妻と伝記が同一であることを発見した、としてなじみが深いかもしれない。フランクリンは、数多くの米国初の記録を持つ。初の公共図書館、初のタブロイド誌出版、初の日めくり名言暦、初の消防組合、初の火災保険、また、後のペンシルバニア大学の創設もフランクリンの業績の一つである。。カール・マルクスは新大陸における最初の偉大な経済学者として敬意を払い、デイヴィッド・ヒュームは「新世界における最初の哲学者、かつ偉大な文筆家」と呼んだ。


第40回 『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎 (岩波文庫 )

本書は満州事変で日本の軍国主義が勢力を強めていた1935年に「日本少国民文庫」全16巻の第12巻で第一回目の配本として出版された。主人公の中学2年生コペル君と友人たち。そしてメンター的役割のおじさんとの交流を通じて、コペル君が気づき、学び、そして傷つきながらも成長していく物語は涙を禁じ得ない。と同時に、インサートされているる美しいイラストと共に描写される街の風景があたかも映画を見ているかのように私たちに訴えかけてくる。読んで良かったとの評が多かった課題図書である


第41回 『道は開ける 新装版』 デールカーネギー (創元社 )

言わずと知れた自己啓発の世界的大ベストセラー。人間塾で初めて取り上げた現代のビジネス書である。アドラーや孔子などの言葉を引用し、現代的で非常にわかりやすいエピソードと古今東西の名言が数多く編纂されている「悩みの克服法」の書籍である。カーネギー自身が「悩みの人」であったため、心理学、精神医学、哲学、宗教、伝記とあらゆる本を読破し本書にそのエッセンスをまとめたという。学術的なバックグランドがしっかりとしていながら、学術書的難しさの片鱗も感じさせないところこそ、まさに世界的大ベストセラーたる所以だろう。


第42回 『新版 歎異抄 現代語訳付き』 千葉乗隆翻訳 (角川ソフィア文庫 )

「徒然草」「方丈記」と並ぶ「日本三大古典」の一つと呼ばれ「日本で最も読まれている仏教書」とも言われている。人間塾の課題図書となっている「善の研究」の著者であり日本三大哲学者の一人である西田幾太郎は「いっさいの書物を焼失しても『歎異抄』が残れば我慢できる」と語っている。本書は親鸞聖人亡き後にその教えが誤った形で伝わっていることを嘆いた高弟の唯円が書いたと言われている。また本書は仏教学者や僧侶の間にも数々の誤った理解をされている。本書で最も有名な「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや」で言う「善人」「悪人」とはそれぞれ「自力で往生しようとする人」「自力では往生できないとわかっている人」のことであり「他力」とは「阿弥陀仏の本願」のことである。


第43回 『人を動かす 新装版』 デールカーネギー (創元社 )

1936年初版。原題は「How to win friends and influence people 」(友をつくり人に影響を与える方法)。「人を動かす」という表題は、あたかも上から目線で強制的に人を動かすような誤った印象を与えがちだが、原題を読むと著者の意図がよく伝わってくる。カーネギーの代表作として世界中で翻訳され、これまでに1500万部以上販売されているという驚異的な名著である。本書は当初、講演会の教材としてのカードだったそうだ。それが薄いパンフレットになり、少しずつ厚くなり、本書になったという。平易でわかりやすうエピソードが満載だ。


第44回 『「いのち」の教え』 東井義雄 (佼成出版社 )

浄土真宗の本願寺派東光寺の長男として生まれ、兵庫県の小中学校教員、校長、大学講師を務め、多くの教職者に影響を与えた著者の書。珠玉のエピソードの数々に読む度涙を禁じ得ない。障がい者の子どもが嫌がらせを受け、水泳の選手として泳がされたときに、校長先生が背広のままプールに飛び込み、謝りながら応援した話。テストで98点を取りほめてもらおうと胸を踊らせて帰ったら100点でないのか、と言われがっかりした子どものエピソードなど。平易な文章ながらも深い気づきを与えてくれる。同時に行間から滲み出る著者の深い愛と人間性の大きさから学ぶ点も多い。


第45回 『イワン・イリッチの死』 トルストイ (岩波文庫)

人間塾初めての小説。トルストイの短編名作である。地方の一官吏であるイワンイリッチが不治の病にかかり、肉体的にも精神的にも苦痛を味わいながら、迫る来る死の恐怖と孤独感と戦っていく様が、鬼気迫るように描かれる。本人の苦しみを知ってか知らずか、ポーカーの話題に興じる同僚たち。オペラに気もそぞろな妻と娘。他人事のような医師。イワンイリッチは「なぜ自分だけが・・・・・・」と運命を呪い、自らをよりいっそう苦しめていく。そんな彼が、嘘のない素朴な使用人と純真無垢な息子の涙に触れた時に、彼は突然悟る。そして、幸福感を感じながら死んでいくのだ。これまで塾で学んだ仏教や心理学の教えが体現されている


第46回 『臨済録』 入矢義高 (岩波文庫)

「仏法の大意とは何か?」と問われ、師は払子をピッと立てた。そこで質問した僧は「喝!」と一喝した。するとすかさず臨済和尚は払子で僧侶を打ち据えた・・・・・・。このような禅問答が繰り返される。禅に関する知識がなければ、おそらくほとんど意味がわからないだろう。もしも知識なくその教えに気づけたとすれば、それは悟りの世界にいる人なのかもしれない。塾長の私を筆頭に塾生一同が悪戦苦闘しながら学んだ古典的名著。本書のサブテキストとして「禅の神髄・臨済録」里道德雄 NHK出版 などの解説書を併読することをお勧めする。


第47回 『愛するということ』 エーリッヒ・フロム (紀伊國屋書店 )

1956年にニューヨークで出版されて以来、世界中で読み継がれ、日本語版だけでも30年の間に40万部以上売れているロングセラー。原題は「The Art of Loving 」(愛の技術)本書によれば愛とは「自分意思ではコントロールできない感情」ではなく「技術」であると言い切っている。「一人でいることができない人は愛することができない。相手にしがみつくとしたらその関係は愛ではない」「赤の他人を愛することができない人は身内を愛することもできない」などハッとさせられる言葉の数々が並んでいる。


第48回 『坂村真民一日一言』 坂村真民 (到知出版社)

「念ずれば 花ひらく」で有名な詩人坂村真民の詩を365編選び、カレンダーに沿って編纂したポケットサイズの書。「念ずれば 花ひらく 苦しいとき 母がいつも口にしていた このことばを わたしもいつのころからか となえるようになった そうしてそのたび わたしの花がふしぎと ひとつ ひとつ ひらいていった」「小さい花でいい 独自の花であれ 小さい光でいい 独自の光であれ」「尊いのは頭でなく 手でなく 足の裏である (中略)しんみんよ 足の裏的な仕事をし 足の裏的な人間になれ」詩から学ぶ生き方の書。


第49回 『家庭教育の心得21』 森信三 (到知出版社)

長年に渡り森信三のお世話をされ本書を編纂された寺田一清氏曰く「家庭教育の『聖書』」とのこと。有名な「しつけの三原則」をはじめ「子どもの前では絶対に『夫婦喧嘩』はするな」「子どもの躾けは母親の全責任!!」「父親はわが子を一生のうちに三度だけ叱れ」「九つほめて一つ叱れ」「子どもや若者は社内で必ず立つように躾けよ」「母親は家庭の太陽である」など具体的、平易であり、かつその奥にある深淵な哲学が読み取れる。母親のみならず、父親、そして子どもがいない夫婦、青年にもお勧めできる良書。


第50回 『ユング心理学入門―心理療法コレクション〈1〉』 河合隼雄 (岩波現代文庫)

1967年初版。日本で初めて本格的にユング心理学を紹介した書。ユング派の大家であり元文化庁長官でもあった故・河合隼雄の処女作でもある。私がユング心理学を課題図書に選出した理由は二つある。一つは、私が学んできたアドラーだけでなく広く心理学全般を学びたいと思ったこと。もう一つは私が著者の河合隼雄氏に惹かれているからだ。河合隼雄の語り口調は優しく、大らかで、嘘がなく、人間愛に満ちている。私が目指す「こんな人間になりたい」人間像に一番近いのが河合隼雄かもしれない。その河合隼雄が生涯かけて研究し没頭したユングを河合氏の解説で読めるのはとても幸福なことだ。ユング理論だけでなく、河合氏自身の体験談もたっぷり語られ、ユングと河合隼雄で「二度おいしい」のが本書だと思う。ユングの入門書としても最適。


第51回 『分析心理学』 カール・グスタフ・ユング (みすず書房)

1935年、60歳のカール・グスタフ・ユングがロンドンのクリニックで200名の医師に向けて行った講演の講話録。無意識、コンプレックス、夢分析、元型、転移、投影など、様々なテーマについて広範かつ平易に触れている。ユングは一般読者を対象とした入門書を書かないことで有名であり、本書はフロイトが自己の心理学を講義した「精神分析入門」と対比され、入門書の良書として認識されている。本文中にはフロイト、アドラーとの対比や、ユング独特の宗教との接点も示され、ユング心理学の深さや独自性が色濃く反映されている。人間塾ではアドラー心理学に続き学ぶこととした。


第52回 『荘子〈1〉』 荘子/ 森 三樹三郎訳 (中公クラシックス)

荘子は戦国時代の思想家。老子と共に合わせ老荘思想と呼ばれる。重厚な思想と軽妙かつ比喩と寓話に富んだ独特の文体にファンが多い。この世界で生きることにどのような意味があるのか?どのように生きれば意味を持てるのか?という「道」の世界を語っている。荘子の主要なテーマは斉物論と呼ばれ、人間の主体性に関する問題である。私という人間の主体は私であるはずなのに、逆に没主体的で疎外された存在になってしまっている。我々が自己疎外を克服して人間としての真の生を定立することを目指している。


第53回 『人生に生かす易経』 竹村 亞希子 (到知出版社)

人間塾では「四書」(大学、論語、孟子、中庸)については繰り返し取り上げてきたが「五経」についてはこれが初見となる。本書は「易経とは何か」「なりたち」「八卦とは?」「陰陽とは?」などの基礎知識も書かれ、初心者である私たちにとってありがたい本である。本書を入り口として、単なる占いとして誤解されがちな「易経」をその本分である「儒学の経典」「帝王学の書」として理解を深めたいものである。。我が国における「易経」研究の第一人者である著者による「リーダーの易経」「易経一日一言」「人生に生かす易経」などもお勧めである。


第54回 『善の研究』 柴田秋雄 (講談社学術文庫)

明治44年に出版された日本を代表する知識人・西田幾太郎の代表作・処女作である。本書は西田30代後半の才気ほとばしる年代の著作であり、難解との評価から途中で挫折する読者多数と言われている。本書は同書に詳細な解説を付け加えた初心者にとってはとてもありがたい本である。中でも「純粋経験」は理解することが困難であると同時に西田哲学の根底でもあり、本書により理解することは大きな価値があると思われる。西田哲学は陽明学との接点も深く、人間塾の象徴とも言える森信三は西田幾太郎の愛弟子とも言われ、まさに人間塾らしい課題図書の選択であると言えるだろう。


第55回 『日本的霊性』 鈴木大拙 (角川ソフィア文庫)

現代仏教学の頂点をなす著作であり、著者が到達した境地が遺憾なく示される。日本人の真の宗教意識、日本的霊性は、鎌倉時代に禅と浄土系思想によって初めて明白に顕現し、その霊性的自覚が現在に及ぶと述べる。大拙(1870-1966)は日本の仏教徒には仏教という文化財を世界に 伝える使命があると考え、本書もその一環として書かれた。(以上 表紙カバーより)平安時代までの日本人が八百万の神を畏れるばかりであったが鎌倉仏教によって日本的霊性が目覚めたと いう。宗教とは何か?仏教とは何か?に対する答えを表している鈴木大拙の代表作。


第56回 『日本でいちばん幸せな従業員をつくる!”やさしさ”を基準に考えたら、会社はみるみる生まれ変わった』 柴田秋雄 (監督:岩崎靖子)

奇跡体験!アンビリバボー」(フジテレビ)、TEDなど多数のメディアで取り上げられた、ホテルアソシア名古屋ターミナル総支配人柴田秋雄によるホテル再生の感動物語。4期連続赤字、負債8億円を抱えたホテルをV字回復させたのは、財務や戦略論ではなく極めて人間臭い「愛」 の経営だった・・・・・・。人間塾ではドキュメンタリー映画「日本一幸せな従業員をつくる!」(監督/岩崎靖子)の上映会と著者の講演会を開催。涙なくしては見られない。本書は古典ではないが、人間塾塾生がこぞって「学びたい」と声をあげた名作であるため特例として選出した


第57回 『人生と陽明学』 安岡正篤 (PHP文庫)

人間塾において森信三と並んで多く取り上げている安岡正篤の講話録。王陽明の「伝習録」を読み解く助けとなるだろう。陽明学が勃興した明の時代背景と陽明学が果たした役割、そして中国だけでなく、日本人の精神に対していかなる影響を与えたかなどが語られている。日本において陽明学を発展させた中江藤樹、熊沢蕃山、佐藤一斎など、人間塾でも取り上げてきた幕末の志士たちにつながる偉人による様々なエピソードが語られ、実践の儒学、知識よりも行動を重んじる陽明学の本質がよくわかる。著者が東京帝国大学を卒業した際に出版したのが「王陽明研究」と「王陽明伝」であり、安岡氏の語りからその傾倒ぶりや畏敬の念がにじみ出るように伝わってくる。陽明学をもって危険思想と呼ばれる理由の一つである大塩中斎(平八郎)の乱についても新たな視点を得られるだろう。


第58回 『禅』 鈴木大拙 (ちくま文庫)

国際的に著名な仏教哲学者・鈴木大拙氏による禅の解説書。「代表的日本人」と同じく外国人向けに英語で書かれた著作から禅の本質にあたる内容を選出、邦訳したものである。外国人向けに書かれているがゆえに、明快な論旨とわかりやすくシンプルな文体であり、日本人にとっても禅の入門書として極めて有用であると思われる。「臨済宗」を初めとする難解な禅問答の書を学ぶに当たり、これまであえて避けてきた解説書を読む必要生に気づき、本書を課題図書として指定した。入門書を学んだ後に禅の名著に戻り「無門関」などにも、塾生の仲間と共にチャレンジしていく予定である。


第59回 『良寛 旅と人生』 松本市壽 (角川ソフィア文庫)

子どもとかくれんぼをしたり、手まりで遊ぶ姿で有名な良寛。江戸時代末期の僧侶、良寛は住職とならず子どもたちと遊びながら様々な優れた和歌や漢詩を生み出し、今でも人々の心を揺り動かしている。良寛は幼少期から「論語」や「孟子」などの儒学に親しみ、家業の名主見習いとなるが、家出をし出家する。禅僧となってからも寺の住職とならず、長岡藩主からの誘いも断りボロボロの物置のような庵に住んだ。良寛は69歳の時、40歳も年が若く美しい貞心尼と出会い、やがて二人は親密な仲となる。二人で多くの短歌を残すこととなる。本書は良寛の生涯についての解説と和歌の代表作が収容され、入門書として最適である


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