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2月22日配信 一偶を照らす vol.20『許す、か、なじる、か』



vol.20『許す、か、なじる、か

年に何度か過ちを犯す。

人としてやってはいけないこと。お天道様に顔向けできない恥ずべき行為。
わかっているはずなのに、それでもやってしまう恐ろしい過ち。つい最近も、
私はそれをやってしまった。

10年ぶりに、再びゼロからの創業を始めたこの年末年始。あまりの忙しさと、
未知なる世界への不安から、私は余裕を失っていたのだと思う。

初めての自社開催でのセミナー、次世代リーダー塾。私はこれまで、部下た
ちがやってくれていた。もしくは、お客様にお任せしていた講演会の下働き
をすべて自分自身でやる、という環境に身をおかれていた。

簡単な事務作業だ。難しくはない。そう高をくくっていた私は、あまりの作
業量と、細かなイレギュラー対応に忙殺されていた。しかし、それだけでは
ない。毎週のように本来の仕事。講演と研修、コンサルティング、単行本や
新聞雑誌の連載の締め切りはやってくる。私は、30代に初めて創業した頃の
ように睡眠を削りながらこれらと必死に格闘をしていた。

それに加えて、私は大きな不安を抱えていた。「果たして、セミナーに申込
みはあるだろうか……」「誰も来てくれなかったらどうしよう……」。
お客様の集客に関しても焦りを感じていたのだ。これまで、自分一人で集客
をしたことがない。この分野においては充分にベテランと呼ばれている私だ
が、心の中では初心者のように大きな不安を抱えていたのだ。

そんな中での、次世代リーダー塾の案内文作成。私は、一人でも多くの方に
参加してほしい、と力を込めて文章を作っていた。そして、やってしまった。
力みすぎて、力の加減を見失ってしまったのだ。

ここで、その宣伝文章を再現することは、お客様にご迷惑がかかるので致し
かねる。しかし、力んでしまった私は、新たなお客様の獲得に力を入れ過ぎ
て、これまでお世話になっていたお客様にご迷惑をかけてしまいかねないよ
うな、身勝手な文章で本塾を紹介してしまったのだ。

その数日後。ご迷惑をおかけしてしまったお客様、伊藤さん(仮名)から連
絡があった。「まことに申し上げにくいのですが……」。とても丁寧な口調
で、私の宣伝文について、問題の起きる可能性を指摘して下さったのだ。

私は自分のしてしまったことに対して、恥ずかしさでいっぱいになった。
そして、私が主催している生き方に関する勉強会「人間塾」の塾生の皆さん
の顔を思い出して、消えてしまいたい気持ちになった。

私はすぐにメールで謝罪をした。私自身、不安と焦りから、我欲に溺れてし
まったことをお詫びしたのだ。

そして、その翌週。以前から決まっていた仕事で私は伊藤さんを訪ねた。
「きちんと謝らなければならない……」私は数日前から気が気ではない思い
を抱えていた。そして、お会いしたときに謝罪の言葉をお伝えした。

「先日は、ご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありませんでした……」。

私は、伊藤さんから苦情を言われることを覚悟していた。場合によっては、
取引停止となる可能性もある。当然のことである。そして、伊藤さんから
のお叱りの言葉を待った。頭をあげることができなかった。

しかし、私の期待は裏切られてしまった。伊藤さんは私を寛大な心で許して
下さったのである。それだけではない。意外な言葉をかけて下さったのだ。

「小倉さん。こちらこそ、せっかくの企画に水を差すようなことを言って申
しわけありません。私たちは小倉さんの新しい企画を応援しているのです。
ご盛況のようで本当によかったですね。これからもよろしくお願いします」

そう言って下さったのだ。私はそのときに初めて心の底から深く気がついた。
あぁ。何というひどいことをしてしまったのだろう。こんなにも私を応援し、
助けて下さっているお客様に対して配慮をせず、身勝手な行動をしてしまった
のだ。私は改めて申し訳ない気持ちと、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

そして、私はその時、ある業者さんとの苦い思い出を瞬間的に思い出した。
あぁ。あの時の私はなんというひどい対応をしてしまったのだろう。そして、
伊藤さんは何と寛大な対応をして下さったのだろう。問題に対する対応に、
天と地ほどの格差がある。だから、私はあらゆるものごとがうまくいかなか
ったのだ。そう気づいたのだ。

かつて、私が発注側として、ある業者さんに仕事をお願いしたことがある。
その時に、私はその業者さんの仕事ぶりに大きな不満を抱いていた。そして、
その業者さんを自社に呼び出した。クレームを伝えるために、だ。

私は、うなだれた表情でやってきた業者さんに対して、一方的にその非を責
め立て、なじった。そして、どうしてくれるのだ?と対応を求めた。業者さ
んは平身低頭し、私の苦情をすべて聞き入れた。そして、全社をあげて私の
クレームに対応してくれたのだ。

しかし、それにより大きな禍根が残った。私とその業者さんとはその後、二
度と会うことはなかった。恐らくお互いに同じ思いを持ったのだろう。「あ
いつはなんてひどいヤツなんだ」と。「二度と顔も見たくない」と。

例え、相手が悪くとも。それを一方的になじっても何も問題は解決しない。
いや、むしろ相手はそれに反発をするだろう。「自分だって悪い。しかし、
あんな一方的な言い方はないだろう。いくら何でもひどすぎる」。そう思う
のが人情というものだ。

そうではなく、それを許すのだ。「大丈夫ですよ。これからもよろしくお願
いしますね」と。その方がよっぽど相手は反省する。そして、罪滅ぼしとご
恩返しを誓うだろう。あたかも、今回、私が決意をしたように……。

47年間も生きてきながら、私はいまだにこのように失敗を繰り返している。
偉そうに人様に生き方を語りながら、いまだに私はこの体たらく、有様だ。
そして、これからも私は過ちを犯し続けるだろう。毎度毎度、反省をしなが
らも、そう簡単には性根が直らないのだ。

そして、またメルマガで懺悔をするだろう。生き恥をさらすだろう。それが
ほんのわずかであれ、誰かの役に立つと思うからだ。そのために、私自身の
恥をこれからもさらし続けるであろう。

それこそが私の考える「神様から与えられた使命」だと思っているからだ。
しかし、本当の本音を言えば、私だって、もう恥はかきたくない。しかし、
そのためにすべきは、恥を隠して筆を置くことではない。恥をかかなくても
いいように、生き方を改めるしかない。伊藤さんに、大きな教えをいただい
た帰り道、私は星空を眺めながら一人、そんなことを考え歩いていた。


【 編集後記 】

昨日、数ヶ月ぶりに新宿駅東口に朝5:30に集合して街頭清掃のボランティア
活動をしてきました。雪が降ろうかというほどの肌寒い中、真っ暗な駅前
に集合したボランティアは100人ほどでしょうか。私は、その中で、いつも
やっているどぶさらいの清掃をさせていただきました。
http://www.souji.jp/

NPO法人日本を美しくする会が全国で主催するこの活動。私は一年前の2
月に初めて参加させていただいてから、ようやく6回目の参加となりました。
仕事の都合で出られない月が半分以上あったのです。

真っ暗な状態でスタートした街頭清掃のどぶさらい。やがて、朝日があがり、
爽やかな大空が広がります。寒さに震えていた体も、掃除で動くことにより、
やがて汗ばんで来ました。そして、心地よい気持ちに包まれていったのです。

本コラムにあるように、日々、間違いを犯し、人を傷つけている私。だから
こそ、このようなささやかなボランティア活動でのわずかな罪滅ぼしが、私
自身の気持ちを少しだけ軽くしてくれるのです。

「してあげる」のではなく「させていただく」そのありがたさが、改めて身
に深くしみていきました。また来月も来よう。そう思えた素晴らしい朝でし
た。もっと、4時起きだったので昨日は21時に眠ってしまいましたが(笑)
また、来週もお楽しみに!

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