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3月8日配信 一偶を照らす vol.26『子どもなんて、死んだ方がいい……』



vol.26 「 子どもなんて、死んだ方がいい…… 」

「小倉さん、最近どうしてもやる気が起きなくて……」。

小倉広「人間塾」と「次世代リーダー塾」の双方に通っている、勉強熱心な菅原
さん(仮名)がうつむいた。

「でも、このままじゃいけない、ってわかってるんです。やる気が起きないのは
『志』が低いから。覚悟が足りないからだって、わかっているつもりです。だか
ら、もうひとがんばりします。私がやらないと部下たちも困るはず。まだ責任の
自覚が足りないですね。いやぁ。反省です」そう言って沈んだ表情を浮かべ、私
に確認を求めた。「この考え方で、いいんですよね?小倉さん」。

私は、にっこり笑って返答した。
「菅原さん。違いますよ」。
えっ?と驚く表情の菅原さん。私は、言葉を付け加えた。

「菅原さん。そんなに自分を追い込んじゃダメですよ。菅原さんは充分頑張って
いるじゃないですか。やる気なんて起きなくていいんですよ。私だって、やる気
が起きないことなんてしょっちゅうですよ」。

そして、こう解説をした。

「陰極まれば陽に転ず、陽極まれば陰に転ず」

陰と陽は相反する概念ではない。陰の中に陽がある。そして陽の中にも陰がある。
そして、陰が極限まで行けば、逆に陽に転ずる。その逆もしかり。これが自然の
法則だ。

やる気がない状態を陰。やる気がある状態を陽とするならば。陰の状態を否定し、
無理矢理押し殺すのではなく、陰を認めるのだ。やる気がない。いいじゃないか。
あーやる気がない。堂々とそれを公言し、仕事をサボればいいのだ。

すると逆に陽に転ずる。仕事がやりたくて仕方がなくなってくる。私の場合は、
まさにそう。やる気がないのは、体からのメッセージ。そろそろ休みなさい。そ
して無理して頑張らず、サボりなさい。気楽にやりなさい、という脳からのメッ
セージなのだ。

そんなときに、無理矢理自分の気持ちを押し殺すと逆効果だ。やる気のない自分
を責め、否定して押し殺す。すると、いつまで経っても陽転することができない。
むしろ逆効果になる。先の菅原さんはまさにそれ。やってはいけないこと。すな
わち自分の心を押し殺してしまっていたのだ。

敬愛する日本を代表するユング派の心理学者、故・河合隼雄先生の著書に「ここ
ろの子育て」(朝日文庫)という名著がある。その中で次のようなエピソードが
紹介されている。私はまさに!と膝を打ったことがある。

周産期センターという早期出産の母子をケアする施設でのできごとだ。当然だが
未熟児として生まれて来た子どもを助けるために医者や看護婦、母親皆が死にも
の狂いで必死に看病をしている。

しかし、母親は不安になるのだという。「自分はこんな子どもを産んでしまった」
「下手に育ててもらって変な子になったらかなわん」と。そして、こんなことを
思ってしまうのだという。

「ほんとはわたし、あんな子はいりません」
「死んでくれた方がいい」と。

しかし、医者や看護婦さんはそんな母を叱りたしなめる。「なんてことを言うん
ですか。われわれはこんなにがんばっているんですよ」と。そこでお母さんは言
いたいことが言えなくなる。ぐっと呑み込んで我慢するのだ。しかし。河合先生
は続ける。

(以下、引用)

「思い切ってマイナスの気持ちがあるのを肯定すると、プラスの方が動き出すと
いうことがあるのです。マイナスはいけないと思い、抑え込みすぎていると、
プラスも動かないというところがあります。焦らずに自分の気持ちを受け入れる
ことです」

「いっぺん『死んだ方がましや』とまで口にして、それをそのままじっくり聞い
てもらわないと、人間って反転しないんですね。これは子どもも同じです」。

「泣いたり怒ったりしている子どもには、すぐに『泣くんじゃないの』とか『怒
るのやめなさい』とか言ってしまわずに、『そうやね』と受け入れてやるんです。
そうしたら子どもは、その気持ちから抜けていけるんです」

(以上引用終わり)

まさに、「陰極まれば陽に転ず、陽極まれば陰に転ず」そのものではないか。

私は、そんな話しを引用しながら菅原さんにこう言った。

「やる気が起きない? 最高じゃないですか!どんどんサボりましょう!」と。

生真面目な菅原さんのことだ。プレッシャーから抜け出せれば放って置いてもや
る気になるのは目に見えている。だから、私は安心して菅原さんに陰を極めるこ
とをお勧めしたのだ。

皆さんはいかがだろうか? 辛いとき、苦しいとき。さらに自分を追い込んではい
まいか。陰の気持ちを抑え込んで余計に苦しんではいないだろうか?

はたまた、自分の部下や後輩、さらには娘、息子を追い込んではいまいか?
「そんなことを言ってはいけません!」と叱ってはいないだろうか。

そんなときはこの言葉を思い出したいものだ。
「陰極まれば陽に転ず、陽極まれば陰に転ず」

我ながら、いい言葉を思い出したものだ。さてと。私はもう、やる気が起きない
ので、仕事を放り出して、一杯飲みに出かけることにしよう。そうすれば、必ず
や、陽に転じるはずだからだ。さあ、筆を置くこととしよう。どうか、皆さん、
行き先は尋ねないでいただきたい。

【 編集後記 】

最近の私はアドラー心理学にはまっています。ヒューマンギルド社社長の
岩井先生には、公私ともにすっかりお世話になっている状態。そして、私
の公私ともの師匠、メンターになっていただいています。
http://www.hgld.co.jp/

「アドラー心理学ベーシックコース」「愛と勇気づけの親子関係セミナー
SMILE」と二つを受講し、間髪入れずに現在は「アドラー心理学カウンセ
ラー養成講座」に通っているところ。この週末も二日連続で受講し、無事
卒業する見込みです。

そして、事務所にはアドラー心理学や河合隼雄先生、その他カウンセリング
に関する本が山積みです。今は、勉強することが楽しくて仕方がない状態。
これまで学んできたことが心理学で一本キレイに筋が通るのが心地よいの
です。

そして、4月以降はこの学びとこれまで25年間の社会人経験を活かして、新
たなフィールドに踏み出す予定。そう、カウンセリング+コーチング+コン
サルティングの小倉広独自の個人支援を開始しようと考えています。

対象者は経営者はもちろんのこと、会社務めの方も支援していきたいと考え
ています。詳しくはサハラマラソン出走の4月1日前後に発表の予定。次々と
新しいことに踏み出していく予定です。仕事を通じて世の中の役に立つ。
得意で利他。というメンター坂上仁志さんの言葉を胸に刻みながら、頑張っ
て参ります。どうぞよろしくお願いします。

では、来週もお楽しみに!

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