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3月4日配信 一偶を照らす vol.24『興味本位で語るまい』



vol.24 「 興味本位で語るまい 」

本メルマガは、2011年3月29日に配信したバックナンバーをアンコール
傑作選として再度お送りするものです。



愛読している月刊『致知』2月号の特集「いただいた命を最後まで生き抜け」
を読み返している時にあることに気づいた。

曹洞宗長寿院住職でありNPO法人自殺防止ネットワーク風理事長の篠原鋭一氏
のインタビューである。住職は「自殺防止の駆け込み寺」と呼ばれ20年間に
渡り24時間、相談の門戸を開いている。

「明日死のうと思います……」そんな電話が毎日3~5件、土日には10件以上も
掛かってくるという。そこで紹介されているいくつかのエピソードのうち、
1つが僕の目を引いた。1回目に読んだ時はさして気にならなかった。しかし、
2回目に読んだ時にハッと気がついたのだ。それは次のような話だ。

(以下引用、一部編集)

住職がこのような活動をしていると、月に3回は次のような電話が掛かってく
ると言う。「死にたいやつは、死なせろよ」。その時に住職はこう尋ねた。

「あなた、ご家族は?」
「妻と息子夫婦と孫が3人いる」
「ほう、お孫さんがいらっしゃるの。かわいいでしょう」
「かわいいに決まってるだろう」
「じゃあ、そのかわいいお孫さんがイジメにあって、苦しいから死にたいって
 言ったら、あなたは『苦しいなら死ねよ』って言えるの?」

電話はガチャンと切れたと言う。

人は自分にかかわることでなければ本当に理解しようとしません。自死の問題
も、ほとんどの人が人ごとだと思っているのです。

(以上引用終了)

2回目にこのエピソードを目にした時、別のエピソードとつながった。それは、
論語など東洋哲学の専門家であり学校法人名古屋大原学園の学園長でもある杉
山巌海氏の言葉だ。

杉山氏がまだ学生の頃、遠くに消防車のサイレンが聞こえた。「火事、どこか
な?大きいのかな?」興味本位でおしゃべりをする氏に向かって、父親が厳し
く叱ったという。

「人様の不幸を面白半分に言うやつがあるか。そういう時には、『どうぞ大事
に至りませんように』と手を合わせるものだ」と。僕はこのエピソードに触れ
た時に背中に電流が走るような気持ちになったものだ。

「相手の立場に立つ」

誰もが知っている言葉だ。そして、誰もが自分はできている、と思っている。
少なくても、自分自身を自分勝手な人間だとは思っていない。しかし、果たし
てそうだろうか。

テレビやラジオで自殺者が増えている、と聞いた時に胸が痛んでいるだろうか。
遠くでサイレンが聞こえた時に心を痛めそっと手を合わせているだろうか。僕
の知る限り、そのような人は数える程しか思い浮かばない。

先の住職にまつわるもう1つのエピソードをご紹介しよう。

(以下引用、一部編集)

夜中の2時頃、仙台に住むあるおばあさんから電話がありました。
(筆者注:本エピソードは東北地方太平洋沖地震の発生前のもの)

喜寿を迎えたそのおばあさんは、夫に先立たれて1人でひっそり暮らしていま
した。独立した子供たちはもう5年も顔を見せません。おばあさんは寂しくて、
夫の元に旅立とうと思い、首をくくろうとして失敗したのでした。

住職は、たまたま仙台で講演の予定があったため、すぐに飛んで行きました。
おばあさんは、子供や孫から「喜寿おめでとう」と一言でいいから声を掛けて
もらいたいと泣くのです。短歌を習っているというおばあさんはこんな句を詠
んでいました。

「来るはずの  ない息子とは  知りつつも
 車の音に  ベランダに駆け」

住職はおばあさんに、息子ができたと思っていつでも電話をくださいと言いま
した。そして、今も週に2~3回はお話をしています。

(以上引用終了)

僕は僧侶ではない。しかし、もしも僕が僧侶だったとして、果たして同じ行動
ができるだろうか。いや、同じ発想が思いつくか?

おそらく僕は、おばあさんの息子に連絡を取り、おばあさんを大切にしてくだ
さい、と説教をたれることくらいしか思い浮かばないだろう。しかし、その先
に何が起きるか。

おそらく、息子さんは1、2回、電話をし、それっきり元に戻ってしまうだろ
う。その時、おばあさんは、どうなるだろうか。間違いなく、もう一度首をく
くるのではないか。そう考えた時に住職の行動が初めて納得できたのだ。

相手の立場に立つ、ということは、相手の立場を推測することではない。自分
が相手だったならば、どうするだろうか?と考えることでもない。

相手になり切ること。自分が相手だったならば、どのような感情、喜怒哀楽を
感じているだろうか?を心底考えることではないか。その時に初めて正しい行
動が選択できる。そう感じた。

今回の震災で何万人、何十万人という方が失意の底に沈んでいる。そのすべて
に心底からの感情移入はできないが、少なくても興味本位で被災者の数を語る
まい。いや、被災者の方に限らずとも、辛い思いをしている人の噂話を語るま
い、と思った。

【 編集後記 】
最高気温55度。最低気温5度。6日間かけて250kmを走破する世界一
過酷なレース、サハラマラソンに挑戦する6名の選手を応援して送り出す壮
行会のご案内です。選手やゲスト、実行委員にズラリと有名作家が並びまし
た。選手が手に持って走る日の丸に応援のメッセージをぜひお寄せ下さい!
【 特別ゲスト(昨年サハラマラソン完走) 】
浜口隆則さん 「戦わない経営」「心の翼の見つけ方」など5冊
【 出場選手(50音順) 】
今村暁さん 「3分間日記」「10秒朝そうじの習慣」など10冊以上
佐藤雄大さん
中島洋一さん
日垣隆さん 「そして殺人者は野に放たれる」など100冊以上
増田一樹さん
小倉広 「任せる技術」「33歳からのルール」など25冊
【 実行委員の皆様(50音順) 】
岩井俊憲委員長 「勇気づけの心理学」など15冊、生田 泰啓さん
(司会)太田彩子さん 「1億売るオンナの8つの習慣」など8冊
戸田久実さん 「ゼロから教えて接客・接遇」、永藤かおるさん
渡辺進二さん
【 壮行会概要 】
□■□申込みは事前銀行振込必須です。ご協力を御願いします□■□
(1)日時:3月26日(火)19:00~(受付開始:18:30~)
(2)場所:日本出版クラブ会館3階「鳳凰」の間(神楽坂)
http://www.shuppan-club.jp/ 
(3)定員:150名(定員に達し次第締め切ります)
(4)料金:6,000円(必・事前振込制、後日ご連絡)
https://www.facebook.com/events/107490906103757/
お申し込みはFacebookの以下ページから。FacebookのIDをお持ちでない方
は以下へお問合せ下さい。
問い合わせ先:ヒューマン・ギルド 永藤かおる
(メール:nagato@hgld.co.jp、電話:03-3235-6741)
では、次回もお楽しみに!

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