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1月28日配信 一偶を照らす vol.10『過去を変えることはできない』



過去を変えることはできない

【 アンコール傑作選 】
本メルマガは、2011年1月20日に配信したバックナンバーをアンコール
傑作選として再度お送りするものです。


「過去を変えることはできない」


僕の好きな言葉の一つとしてこんなものがある。

「過去と他人を変えることはできない。
 しかし、未来と自分を変えることはできる」

かつての僕は、過去を変えようとあがいていた。他人を変えようとあがいてい
た。しかし、どちらも不可能だ。だから苦しい。いつもイライラとしていた。

部下が仕事の約束を守らなかった時、繰り返し責め立てた。

「なぜ、約束を守らなかったのか?なぜ徹夜してでもやろうとしなかったのか?
 おまえにやる気はあるのか?」と。

部下は困った顔をしてうつむいていた。「申し訳ありません」。ただ謝るしか
ない。それが部下の心情だろう。

しかし、僕はそれでも許せなかった。変えることなどできるわけもない過去に
拘泥し続けた。部下に過去の過ちを認めさせたい。気づいてほしい、という親
心を言い訳にして、イライラとした自らの怒りの感情をただ部下にぶつけてい
たのだ。

そして、過去の認識を変えさせることにより、部下の心を変えようとした。仕
事への取り組み姿勢、もっと言えば生き方を変えようとしていた。それはまさ
に相手を変えること。僕は不可能なことばかりをやり続けていたのである。


会社を立ち上げてからの頃、30代も終わりにさしかかる頃でさえ、僕はそんな
状態だった。そもそも不可能なことを無理やりやろうとしてばかりいた。そし
て、案の定、ことごとく失敗した。しかし、なぜうまくいかないのか。その理
由に気づかない。

「自分は正しい。決して間違っていない。わかっていないのは部下だ。愚かな
 のは部下だ」

そうやって、部下に矢印を向け続けていたのである。

僕は同じ過ちを何回も何十回も繰り返した。そして自問自答を繰り返した。な
ぜ、うまくいかないのか?どこが間違っていたのか?僕は様々な本を読み、た
くさんの人の話を聞いてようやく悟ったのが先の言葉だ。

「過去と他人を変えることはできない。
 しかし、未来と自分を変えることはできる」

それからの僕は、過去をすべて肯定するようにした。起きたことはすべて良か
ったこと。どんなに辛いこと、理不尽なこと、耐え難いことでも、すべて意味
があること。だから、その意味を探しだそう。意味を見つけ出しさえすれば、
すべて良かった、と思い直すことができるだろう。神様からのメッセージを探
し出すのだ。そのメッセージを読み解けば、過去はすべて良かったことに生ま
れ変わる。

そして自分を変えるのだ。部下を変えようとせず、上司を変えようとせず、お
客様を変えようとせず、自分自身が変わるのだ。なぜならば、相手を変えるこ
とはできない。自分の考え、行動、振る舞い、習慣を変えるのだ。そう考えて
から様々なことが変わり始めた。そして、嘘のように心が軽くなった。

先日、リクルート時代の先輩と久々に酒を呑んだ。その席で先輩がこんなこと
を教えてくれた。

「小倉クンと昔、一緒に仕事をしていた内田クン(仮名)って覚えてる?」

「はい、1年くらい一緒の部署でした」。僕が答えた。

「彼に小倉クンと最近たまに会っているんだ、と話したらね、こう言っていた
 よ。『あぁ、小倉ね。昔、あいつにはひどい目にあわされた。先輩もあの人
 には気をつけた方がいいですよ』と」

あぁ。やっぱりそうか。こうやって過去は消せずにつきまとってくるのだな。
僕は改めてそう思った。

内田クンと僕が同じ職場で仕事をしていたのは今から20年近くも前のことだ。
当時の僕は若く生意気で自信家だった。自分が正しいと思ったことを正面
切って相手に伝え、違う意見を蹴散らしていた。それが正しいことだと思って
いたのだ。

幸いにして僕は上司に恵まれていた。だから、生意気盛りの僕の言うことを上
司がうまくまとめてくれた。理屈としては正しい僕を守り、その意見を通して
くれたのだ。だから僕はますます調子に乗った。正しいことを言い続け、間違
ったことを言うヤツをコテンパンにした。できないヤツ、やろうとしないヤツ
を許さなかった。

しかし、それはあくまでも僕の論理であり価値観でしかなかった。上司の後押
しがあるとはいえ、それはチームの合意ではなかった。僕は一人チームで空回
りをし、それを周囲の同僚たちのせいにばかりしていたのだ。それで何とかな
ったのだ。上司がすべて尻ぬぐいをしてくれていたことに気づかなかったのだ。

僕はその話を聞いて顔が赤くなるような思いがした。過去を変えることはでき
ない。そして過去起きたことはすべて良かったこと。神様からのメッセージは
何だろう。僕は考えた。

40歳を過ぎ、本の執筆や講演の仕事がものすごい勢いで増え始めた時に僕はこ
う悟った。

「僕は書くために生まれてきた。自分の失敗を人に伝えるために生まれてきた」
と。

だから、失敗することは、悪いことじゃない。それはすべて僕の肥やしとなり、
書くこと、話すことの貴重なネタとなる。

人は人の成功談から学ぶより、失敗談から学ぶことが多い。さらには、失敗談
を乗り越え、成功を勝ち取った山あり谷ありの体験談であればもっと良い。読
む人、聞く人はそのプロセスを疑似体験することにより深い学びを得ることが
できるからだ。

僕はそれを伝えるために生まれてきた。そう思ってからは、あらゆる僕の失敗
体験が意味のあること、良かったこと、として再定義されるようになってきた。
過去のとらえ方が変わってきたのだ。

過去を変えることはできない。
しかし、過去の意味づけを変えることはできる。

僕は、そんなことを思いながら先輩の話を聞いていた。

「あの頃は、周囲の人に迷惑ばかりをかけて生きていたなぁ。恥ずかしいなぁ。
 申し訳ないなぁ」

僕は顔を赤らめながらそんなことを思った。そして決意した。

あの頃、迷惑をかけた同僚、先輩、上司、お客様。そして家族や友人たちに対
して、直接の恩返しや罪滅ぼしをすることはできないかもしれない。けれども、
それを他の人へお返しすることならばできるだろう。社会へ恩返しをするのだ。
社会へ罪滅ぼしをするのだ。

こんなコラムが読んでくれている誰かの役に立てば嬉しい。それこそが社会へ
のご恩返し、罪滅ぼしになるからだ。そのために僕はこうして書き続けること
だろう。自らの恥をさらしながら。これからも懲りずに失敗を繰り返しながら。

株式会社小倉広事務所 代表取締役 小倉広
(プロフィール)
https://i-magazine.jp/bm/p/aa/fw.php?i=ogurahiroshi&c=11&n=1187

【 編集後記 】
先週土曜日に、二年目を迎えた小倉広「人間塾」in 東京の13回目を開催して
きました。1周年ということでこれまで毎月開催してきた学びの総集編動画を
有志により編集していただき上映。「あぁ。1年前には人間塾は影も形もな
かったんだなぁ。わずか1年でのべ千名近くの同門の友と出逢うことができ、
素晴らしい学びの輪が広がっているのだなぁ、と感激しました。

懇親会では塾生の皆さんから手作りのケーキと表彰状をいただき涙が出そう
になりました。感謝しているのは私の方です。いつもありがとう。そんな気
持ちでいっぱいになりました。人間塾は東京、大阪、名古屋で毎月1回土曜
に開催。東洋哲学の偉人に生き方を学ぶ、誰もが参加できる、無料の読書会
です。
https://i-magazine.jp/bm/p/aa/fw.php?i=ogurahiroshi&c=7&n=1187

一年間、東洋哲学を学んできて私自身も大変多くの発見がありました。この
たび、一年分の学びを一つにまとめあげたセミナーを作りました。
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第1回:東洋哲学の偉人に学ぶ「リーダーに求められる人間力と生き方」です。

国民教育の父・森信三、幕末の維新三傑の一人西郷隆盛、西郷や小泉純一郎が
師とした佐藤一斎、近江聖人と呼ばれた中江藤樹らの言葉や生き方に、リーダー
としての生き方、人間としてのあり方を学びます。
https://i-magazine.jp/bm/p/aa/fw.php?i=ogurahiroshi&c=14&n=1471

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では、次回もお楽しみに!

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