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9月18日配信 小倉広メルマガ vol.214 『 自分の感情を表出させると伝わる』



vol.214「 自分の感情を表出させると伝わる 」
出典:なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか

上司が部下の感情を揺さぶるためには、部下に感情や思いをさらけ出してもら
わねばなりません。しかし、上司が部下に「思っていることを言ってみろ」と
言っても、部下は「何もありません」と言うだけです。部下に思いを表出して
もらいたいのであれば 、上司がまずは自分をさらけ出すこと。そうすると、安
心して部下もさらけ出すことができます。心を閉ざした組織よりはオープンな
組織のほうが、上司の話はずっと伝わりやすくなるはずです。

-自己開示の返報性
「自己開示」とは、自分を開く、つまり自分のことをさらけ出す、という意味です。とく
に自分にとってネガティブな情報やマイナスな情報も含めてさらけ出すことを、自己開示
といいます。人は相手に自己開示をされると「返報性」が働きます。上司が進んで部下に
自己開示をすると、部下はそのことに恩義を感じます。そして返報性が働いて、部下も上
司に自己開示をするようになるのです。部下を自己開示させるということは、部下の感情
を揺さぶり、部下の感情を引き出すことにつながります。

しかし、職場での自己開示は危険も伴います。自己開示をした結果、相手がそれを受け
とめてくれないと、人は傷つき「 言わなければよかった」と後悔の念を抱くからです。
そして、その後は心を閉ざしてしまうかもしれません。職場で部下の自己開示を引き出すた
めには、自己開示をしても誰からも否定されない、傷つけられないと思える安心できる場
や雰囲気作りが必要です。

たとえば、上司が社内のミーティングで部下に自己開示をさせたいと思うならば、人の
発言を否定しない、人が何か発 言をしたら、それに対して必ずポジティブなフィードバック
をする、などのルールを設けることが必要です。そして、もちろん上司自身が率先して
ルールを守ること。受け入れなくてもいいので受けとめることが大切です。

-3段階の自己開示
自己開示には3段階あります。第1段階は「事実」に関する自己開示、第2段階は「考
え」に関する自己開示、第3段階は「感情」に関する自己開示です。

「事実」に関する自己開示は、たとえば「私、小倉広は47歳です。生まれは新潟県の新潟
市です」というもの。次の「考え」に関する自己開示は、「私はそろそろ50歳になるので、
ビジネス人生も終盤になってきたと考えています」。そして「感情」に関する自己開示は、
「ビジネス人生も終わりに近づいて、私は寂しいなあ、悔しいなあと思っています」。これ
が自己開示の3段階です。自己開示は「 事実」に関するものから始め、最後に最も深い自
己開示の「感情」に至るよう、順番を踏むとやりやすくなります。

しかし、ここで気をつけたいのが、上司が自己開示の場をいくら作っても、上司自身が
自己開示をしていなければ意味がない、ということです。

上司が自己開示をせず、感情を表に出さないような人であれば、必然的にその
職場においては自己開示がタブーとみなされます。それでは誰も自己開示をしません。
上司が部下に自己開示をしてほしいと思うのであれば、まずは上司自身から真っ先に自己開示
することです。そうすることで、返報性が働いた部下も自己開示するようになれば、上司と部下の
距離がグッと近くなるはず。そしてその結果、部下が上司の話を受け入れやすくなるのです。

-感動し、心が動いた時にメッセージは伝わる
人は感動的な話を聞くと、それまで頑なに閉じていた心の扉が聞きます。そして、心に
できた隙間にその話がスッと入るので、その話を受け入れやすくなるのです。ですから、
上司が部下に伝えたいことがある時は、ナラティプストラクチャーの 5 つのステップで、
自己開示を交えながら部下に伝えましょう。そうすると、部下の心が動き隙聞が生まれます。
そして、そこへメッセージが届き、伝わりやすくなるのです。

たとえば私は、私自身の信念である「ご恩返しは本人にではなく、他の人にすればよい」
というメッセージを皆さんにお伝えする時は、次のように、心が動くストーリーとセット
でお話しするようにしています。

私が小学校1年生の時に両親が離婚しました。以前は裕福な家庭でしたが、離婚してから
貧乏になり、母親は工場で働きながら苦労して私たち兄弟を育ててくれました。その時
に、母親のお兄さん、つまり伯父さんがよく助けてくれました。皆を家に呼んでご飯を食
べさせてくれたり、母親の話を聞いてくれたり。 私たちによくお小遣いもくれました。
子供の頃、私は、「伯父さんに助けられている」と思い、いつかお礼を言いたいと思っていました。

しかし、お礼を言えずにそのまま月日が過ぎ、やがて伯父さんが倒れて危篤状態と
なってしまったのです。私が病床に駆け付けた時は、伯父さんはすでに意識がない状態でした。
私は伯父さんの手を握り、今までのお礼を声に出して言いました。「伯父さん、ごめんね。
伯父さんのおかげで今の僕があるんです。ずっとお礼を 言えなくてごめんね。そして、ありがとう」と。
すると、意識のないはずの伯父さんが「うううう l 」と声を上げてボロボロと泣きだしたのです。

結局、伯父さんはそのまま意識が戻らずに、半年後に亡くなってしまいました。
その時に私は伯母さんに、「伯母さんごめんね。伯父さんにご恩返しをしたかったのに、
できなかった」と言いました。すると伯母さんは、「広君、いいんだよ。本人に返さなくても」
「恩は他の人に返してくれればいいの。広君は他の人に優しくしなさい。ご恩は社
会に返せばいいんだよ」と言ってくれたのです。私は「そうか、ご恩返しは本人にできな
くても、他の人に返せばよいのだな」とその時に気がついた、という話です。

これは、伯父さんの話をせずに「ご恩返しは本人にしなくてもいい、他の人にしましょう」と、
一言で言うこともできます。しかし伯父さんの話をするのとしないのとでは、話
の伝わり方が全く違う、と私は思います。ただし、物語は、あなた自身が実際に体験した
り感じたことをもとに話したほうがいいでしょう。部下を感動させようと、上司が作り話
をしたり、借り物の話をしてはいけません。「なんだそれ」と部下にシラけられ、逆効果
だからです。

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