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8月18日配信 小倉広メルマガ vol.203 『 できるようになってから任せるのではない』



vol.203「 できるようになってから任せるのではない 」
出典:任せる技術

– 任せるから「できるようになる」-

部下に仕事を任せられない人に共通する間違ったパラダイム(世界観)がある。
それは「できるようになってから」任せるというパラダイムだ。
しかし、その考え方でいる限り、なかなか部下に仕事を任せることはできないだろう。

思い出してみてほしい。あなた自身がどのようにして育てられてきたのかを。
あなたは最初から今のように完壁に仕事ができていただろうか?
完壁にできていたからこそ、上司から仕事を任されたのだろうか?

恐らく答えはNOだろう。あなた自身が「できるようになってから」任されたわけではない。
「できないうちに」任されたのだ。そして何度も失敗をし、膝を擦りむきながらやり方を覚えてきたはずだ。

「できるようになってから」任されたわけではない。 任されたから「できるようになった」。順番が逆なのだ。

生前元気だった頃の母は、40歳をとうに過ぎた僕の衣食住を常に心配していた。
「風呂に入ったか?野菜は食べているか?暖かい服装をしなさい」
彼女の中で僕は永遠の小学生だったのだ。

上司と部下の関係もとてもそれに似ている。
上司の心の中で部下はいつまでたっても子供のままで大人にならない。
部下が新米だった頃の印象が強烈に頭にこびりついている。
そして部下が成長するのと同じように、上司自身も日々成長を続けている。
だからその差は永遠に縮まらない。いつまでたっても部下が子供に見えるわけだ。

「できるようになってから」任せるのではない。任せるから「できるようになる」。
ムリを承知で任せるのだ。

– 任せない上司は上司失格 –

任せることができない上司は、部下の仕事を自分で抱え込む。そして年がら年中
「忙しい、忙しい」と額に汗をかく。自分は人一倍仕事をしている。そう思い込んでいるのだ。

しかし、経営者から見るとその上司は「仕事をしていない」に等しい。つまりは本来の
上司の仕事をしていない。部下の仕事を上司が奪っていることにしかならないからだ。

経営者からすればこれは大いなる損失だ。部下よりも給与の高い上司が部下の仕事をしているのだ。
その分部下が楽をしている。これが損失でなくて何であろう。
しかも、上司は上司としての仕事に一切手がつけられていないことになる。これでは明るい未来はない。

そもそも部下の仕事とは、「今日」の食いぶちを稼ぐことにある。一方で上司の仕事と
は、「今日とは違う明日」をつくることである。例えば、業務フローを標準化し改善する。
営業戦略を立案し実行する。未来のビジョンを策定し部下を勇気づける。部下育成をする。
これまでとは違うやり方を示し、より良い未来へ踏み出すのだ。

部下の仕事を奪っている上司は、これを怠っているということになる。
目先の忙しさにかまけて本質的な上司の仕事を一切していないことになるのだ。
先に掲げた「高い給与で部下の仕事を奪うこと」が目に見える損失だとすれば、
「今日とは違う明日 」づくりを放棄するということは目に見えない大いなる損失だと言えるだろう。
部下に仕事を任せない上司は二つの意味で上司失格である、と言えるのだ。

– 任せると上司も成長する –

部下に仕事を任せる、ということは上司が本来の上司の仕事へとシフトチェンジすることを意味する。
上司が「昨日」や「今日」の仕事に追われずに、「今日とは違う明日」を
つくる仕事に集中するのだ。それは上司を成長させることになるだろう。

上司が成長しない限り部下は成長しない。目先の仕事に汲々としていた上司が、
ゆったり構えて未来づくり、環境づくりに集中する。そうすれば、部下はより良い環境の中で
のびのびと仕事ができるようになるだろう。
上司から自分の仕事を奪われることもない。上司の成長が部下の成長をさらに促すのだ。

かつての僕は、部下に仕事を任せることができずに年中走り回っていたものだ。 社長というのは肩書だけで、実質はコンサルティング部長兼営業部長兼経営企画室長。いや、 「長 」を外したプレイヤー、という方がより当時の現実に近いと言えるだろう。

当時の僕は「昨日 」の後始末と「今日」の仕事で手いっぱいだった。
だから「今日とは違う明日」づくりをしなくてはならない、と頭でわかっていても体が動かなかった。
目先のことしかできていなかったのだ。

目先の仕事ばかりをしている上司は細かいところにばかり目がいくものだ。今となって
は取るに足らないような細かい問題に僕はこだわり、部下の仕事の隅々をチェックし修正していたものだ。
それをやることにより、もっと大きな損失が起きていることに気づかずに……。

現在の僕は当時気になっていた細かいことがまったく気にならない。
それは、大きな未来づくりに集中しているからだ。大きな未来づくりをしているからこそ、
目先の問題点が小さく見えるようになった、ということもできるだろう。もしも大きな未来づくりに着手
できていなければ、小さな問題点がとてつもなく大きく見えたに違いない。比較する対象がないからだ。

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