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6月27日配信 小倉広メルマガvol.272「「責任感が強い」キミが誤解しがちなこと」



vol.272「「責任感が強い」キミが誤解しがちなこと」
出典:任せてもらう技術

-リーダーなのに任せてもらえない……

同期が花形クライアントを担当するのを横目で見ていたほろ苦い営業部時代を経て、
僕が次に配属されたのは企画室だった。
営業部時代の僕は、農耕型の堅実な仕事は苦手であったものの、
狩猟型の能力を発揮して高い成績を残し続けた。
そしてその成果を買われて、入社2年目にしていきなり、
女性向け転職情報誌の商品企画プロジェクトのリーダーに抜擢されたのだった。

その情報誌は半年ごとにリニューアルをしていたので、
その度にコンセプト設定から予算調整まで、あらゆる面を練り直す必要があり、
社内的にも重要なプロジェクトとして扱われていた。それから1年がたったころだろうか。
プロジェクトリーダーとして、なんとか仕事をこなせるようになってきたころ、
上司である課長が異動で入れ替わることになった。

新しい上司は営業部から来た人で、企画の仕事をするのはこれが初めてだった。
いってみれば、この部署においては僕のほうが1年先輩になる訳だ。
しかもその上司は、部下をやる気にさせるのがうまかった。
「小倉君、この件について教えてよ」と頼りにしてくれ、
僕も頼られることで自分が仕事ができるようになったと勘違いをするようになっていった。

しばらくすると、次第にその上司をうとましく感じるようになってきた。
僕が立てた企画や戦略について、かなり細かいととろまで首を突っ込んできたあげく、
頻繁に修正や見直しを求めてきたからだ。

しかも、見直しの方向性には納得のいかないことも多く、
「下手な口出しはしないでくれよ」という苛立ちがつのっていった。

このプロジェクトのリーダーは自分なのだから、もっと任せてほしい。
だいたい、企画の仕事は僕のほうが経験は長いんだぞ。
僕は内心、そんな不満でいっぱいだった。

-正論を通すことが責任をとることではない

典型的だったのは、媒体のコンセプト作りの場面だ。
あるとき、その情報誌の編集長から「求人情報の掲載の仕方を大きく変えたい」
という提案があった。
それまで職種別に分けていた求人情報を、
「完全週休2日制」「1日5時間勤務可」などの時間別で紹介する形に変えたい、
というのだ。

ライフスタイルに合わせて勤務時間を選べるかどうかは、
働く女性にとって非常に重要なポイントだ。

「このリニューアルは、読者のニーズに応える画期的なアイデアだ!」
そう思った僕は、ぜひこの案を推進しよう、と意気込んだ。
だが、転職情報誌には、読者以外にもお客様が存在する。
それは、求人広告を出してくれる企業だ。
皮肉なことに、時間別の掲載に変更するということは、
企業にとっては非常に迷惑な提案だった。

というのも、当時は一部の大手企業を除けば、
女性が望むような休暇制度や環境がしっかり整っているところは少なかった。
もし時間別の掲載になったら、大手ばかりに応募者の人気が集中してしまい、
中小企業は求人広告を出しても、必要な人手を確保できない可能性が高くなる。
よって、企業を相手に仕事をしている営業部は、このリニューアル案に大反対した。

「今だって情報誌の売上自体は悪くないのだから、
そんな変更はする必要がないだろう。なぜ、余計なことをするんだ! 」という訳だ。
営業部がそのように主張するのはもっともだ。しかし、驚くべきことが起きた。

なんと、僕の上司までもが営業部に同調し始めたのだ。
「小倉君のいっていることは正論だよね。
でも、もう少しほかのやり方も検討できないかな? 画期的な着眼点は大事にしつつ、
営業部の意見もぜひ取り入れてみようよ」

しかし僕は、 「常に時代の先を行かなければ、販売部数を伸ばすことができない。
だから反対を押し切ってでも、この変革を実現することが大切なんだ!」
という立場を譲らなかった。
そして、上司に対して「営業部と編集部の両方にいい顔をしようとするなんて、
課長としての責任を逃れようとしているんじゃないか」とまで思うようになった。

-理想と現実の両方に責任を負うのが本物のリーダーだ

しかし、本当に無責任なのは僕のほうだったと、これを読んでいるキミは気づいただろうか。
会社組織を運営していく上では、常に相反する要素をいかに両立していくかが課題となる。
将来のための変革に思いきってチャレンジするのも必要だが、目先の売上だって大切だ。
そのためには雑誌の読者視点を忘れてはならないが、
そこに広告を出す企業の利益も考えなくてはいけない。

つまり、どちらか一方の利益ではなく、両方を追求するのがビジネスであり、
リーダーの役目、なのだ。
言い換えれば、「今の現実」と「未来の理想」の両方に責任を負う人こそが、
本当に責任感のある人間、ということになるだろう。
僕の上司は、まさにそういう人間だった。
だからこそ、組織において評価され、仕事を任せてもらえていたのだ。

それに対して若いころの僕は、正論を通すことがリーダーとしての責任だと考えていた。
しかし、今ならばわかる。
理想を追うだけなら誰でもできる。
それは本物の責任の負い方ではない、と。

「自分はいつも正しいことをしているのに、上司は仕事を任せてくれない」
そう感じているとしたら。
キミが責任の意味をはき違えている、という可能性がある。
上司を非難する前に、まず、そのことに気がつかなくてはいけない。

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