作家、講演家、心理カウンセラー

小倉広オフィシャルWebサイト

小倉広事務所 HOME

5月23日配信 小倉広メルマガ vol.263 『コンテキストで語ると伝わる』



vol.263「コンテキストで語ると伝わる」
出典:なぜ、上司の話の7割は伝わらないのか

-コンテンツとコンテキスト

たとえば上司がよく遅刻をする部下に、「遅刻をしないで来てほしい」と伝えたいと
しましょう。この時、「話が伝わらない」上司は部下にこう言います。
「遅刻してくるなよ」これでは部下は、「はいはい、わかっていますよ」
「うるさいなあ」と思うだけです。
上司がなぜ「遅刻してくるなよ」と言うのか、その真意を部下は理解できません。

一方、コンテキストを交えて話す上司は、たとえばこんなふうに部下に話をします。
「高橋 (仮名)、昔はオレも高橋みたいによく遅刻していたんだ」
「ある時、大きなプロジェクトがあって、オレはどうしてもやりたいと思い、
そのリーダーに立候補した」
「その時に上司から 『おまえは能力があるし、この仕事は向いていると思う 』
『だけどおまえはよく遅刻をしてくる。そんな人間には申し訳ないけれどリーダーは
任せられない 」と 言われて、自分のやりたい仕事ができなかったんだ」
「遅刻はそれくらい仕事に重大な影響を与えるんだよ」と。

上司が部下に伝えたい話の内容、中身が「コンテンツ」です。コンテンツを部下に
伝えるためには、上司はその背景や文脈、目的も交えて部下に語りましょう。
コンテキストを交えて話すと、話のひだが幾重にも重なり、話の厚みが増します。
そのため上司の言いたいことを部下が理解しやすくなるのです。

-コンテキストにはドラマがある

ナラティブストラクチャーとは、コンテキストそのものです。「言いたいこと」を、
コンテンツ=ナラティブストラクチャーの5つのステップで語るからこそ、そこに
背景や文脈「コンテキスト」が浮かび上がり、ドラマが生まれます。そこにドラマが
生まれるからこそ、人の心が動くのです。

私はお客様の経営理念を作るお手伝いをしていますが、経営理念はまさに
コンテンツ=「結論」です。経営理念には経営者の熱い思いが詰まっています。
経営者は、その熱い思いをぜひ社員に伝えたいと思っています。社員に理解してもらい、
経営理念に沿って社員に動いてもらいたいと考えるのです。しかし、
「お客様を大切にします」「我が社の商品を通じて社会に貢献します」と経営理念を
そのまま社員に伝えても、社員にはその背景にある経営者の熱い思いまでは伝わりません。
結果、社員の心は動かず、社員は行動に移さない、というわけです。

そこで、経営理念を社員に浸透させる際は、「必ずストーリーとセットで伝えてください」
と私はお願いしています。たとえば、創業時の苦労話や事件、お客様からの重大な
クレームや経営の危機などの「障害」と「葛藤」の話を交え、さらにそれらを乗り越え
「達成」した物語を語るのです。そして、それを経営理念につなげます。そうすることで
そこにドラマが生まれ、その話は社員の心を強く惹き付けるのです。

これは経営理念に限った話ではありません。日頃、上司が部下に話を伝える時は
どんな話題であれ、コンテンツだけでなく、その背景や文脈を交えてコンテキストで
伝えることが大切なのです。

-行間をイメージさせよ

コンテキストには、「背景」や「文脈」の他に「行間」という意味もあります。
「行間を読む」という言葉がありますが、これは「文章内に言葉では書かれていない
筆者の真意などを感じ取ること」です。言葉にしづらいけれど伝えたい。
そういう時はコンテキストをたっぷり語ると、そこに「立体的な何か」が見えてきます。

私はお客様の会社の問題や課題を洗い出すためにコンサルタントとして必ず「組織診断」
を行っています。その際は、若手からベテランまで30人程の従業員を選んでもらい、
私が1対1で、1人1時間ずつお話を聞くわけです。その際は、「この会社に入って
どうですか?」とか「どうすればこの会社はもっといい会社になると思いますか?」
といった抽象的な質問をわざとぶつけます。そこで彼らが発言した内容を、 一つ一つ
エクセルの一覧表に全部書き起こしていきます。1人あたり50項目、多ければ
100項目ほどになるので、それが30人分ですから膨大な量となるわけです。
そして、それを「経営理念について」とか「上司・部下のコミュニケーションについて」
などとグループ分けをして、内容は加工せずにそのまま経営者に渡します。

すると、パーッとそれを読んだ経営者は一言、「わかったよ、小倉さん 。 問題は1つだね」
と、すぐに自分の会社の課題を理解してくれます。こちらが「ここが問題なので
こうしましょう」と「結論」すなわちコンテンツを話すより、社員の発言内容を
読んでもらい、その「行間」すなわちコンテキストを感じてもらうほうが
より伝わるのです。

たとえば、上司が部下に困難な仕事を依頼する時も、部下に行間を感じて
もらうように話すことが大切です。
「なぜ今、私たちがこの仕事にチャレンジしなければいけないのか」
「なぜ、あなたにこんなに難しいことをお願いするのか」
「なぜ、これを 1 カ月後ではなく 1 週間後までにやる必要があるのか」
「これをすることにより、あなたにはどんなメリットがあるのか」。
このように上司がたくさんのコンテキストを部下に伝えると、部下は一個一個の言葉を
理解するだけでなく、トータルでそこに浮かび上がってくるものを感じてくれます。
「上司は面倒だからこの仕事を僕に頼んでいるのではなくて、僕の成長を考えてくれて
いるんだな」とか「上司はこのプロジェクトを成功させようと必死に頑張っているんだな」
という、言わば結論=コンテンツが、 口で言わなくても部下に伝わるのです。

多くの上司は、コンテキストで語ることを面倒に思ったり、そんなことはせずに
コンテンツだけをスパッと言えばよいと考えます。しかしそれでは、何度もお話し
しているように、部下の感情を揺さぶることはできず、上司の話は伝わりません。
部下の感情を揺さぶり、部下に伝えていくには、上司はコンテキストを交えて語ることを
さぼってはなりません。そして、部下に行間をイメージさせる大切さを理解し、
それを上司が実践していかなければならないのです。

Top