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2月15日配信 小倉広メルマガ vol.243 『「この時計狂っているよね」と、言っておきながら直さない人は、仕事が人任せ 』



vol.243「『この時計狂っているよね』と、言っておきながら直さない人は、仕事が人任せ 」
出典:成長する人は知っている28の小さなきっかけ

「あれ?会議は3時からだったよな?」
山崎部長(仮名)がメンバーに声をかけます。はい、3時からです、と1人が答えると
部長は「おかしいな。オレの時計だともう3時になっているんだけど、会議室の時計は
3時5分前のままだな。みんなの時計は?」

一斉に時計を見るメンバーたち。そのうちの2~3人が「3時を過ぎています」と同時に
答えました。
「よし、じゃあ会議を始めよう」山崎部長が続けると、全員がハイ、と答え、司会役の
課長が会議開始の宣言をしました。

会議が進んで行く様をぐるりと見渡す山崎部長。1分ほど経ったところで、よいしょ、
と立ち上がり、無言のまま会議室の時計の狂いを修正し始めました。それに気づいた
数名の課長たちがあわてて駆け寄ります。部長、私がやります…。

「そうか?ありがとう。じゃあ頼むわ」部長は再び、よっこらしょ、と言って席に戻り
ながらこうつぶやきました。

「時計が狂ったままにしておいたら、後から来た人に迷惑をかけるからなぁ」
はあ…。返事ともため息ともつかない声を出した司会役の課長は、3秒ほど間を取ると
会議の進行へと戻っていきました。「では、会議を再開します。…」

これらの一部始終を見守っていた私はこう思いました。
「さすがは山崎部長だ。人としての格が違う」と。そして続けて心配になりました。
「いったい部下たちのうちの何人がことの重大さに気づいているだろうか?」と。

会議室の時計の狂いに気づいていながら何もしない課長たち。これは経営者にとって、
とてつもなく恐ろしいことです。少し目端の利く経営者であるならばすぐにこう考える
はずです。

「これと同じことが、仕事の現場で起きている可能性が高い」と。

もしも、製品を作る製造ラインの現場で、何かしらの問題が発生しているのに気づいて
いながらも「まあいいか、誰かがやってくれるだろう」とそれを見過ごす社員がいた
としたら…。もしも、営業マンがお客様の言葉の端々に、何かしらのクレームや要望の
匂いを感じながらも「まぁいいか、何かあれば言ってくれるだろう」とそのまま
やり過ごしてしまったとしたら…。
これは、企業にとって恐ろしい損失をもたらす可能性があるのです。

それよりも何よりも。もっと恐ろしいのは、依存型の組織文化ができあがってしまうこと。
「まぁいいか。誰かがやってくれるだろう」という他人任せの文化が組織に根付いてしまう、
ということは、未来永劫、そのような社員を拡大再生産し続けてしまう可能性が
あるのです。

これと同じような不吉な兆候として、経営者が目を光らせているサインには
以下のようなものがあります。
・オフィスに落ちているゴミに気づきながら誰も拾わない
・オフィスの観葉植物の葉っぱが落ちているのに気づきながら誰も拾わない
・コピー機の脇にミスコピー用紙が重なって置いたままになっている
・宛先が明確なファックスが来ているのに気づいても本人に持っていかない

かくいう私も20代、30代の頃は、まさに危険な社員でした。気づいていながらも知らん顔
をする、まさに依存型、他人任せのダメ社員でした。しかし、ことの重大さに気づいて
からは極力自らがやるようにしています。会議室の時計が狂っていたら、自らが直すように。
そう。山崎部長と同じ行動を取るようにしているのです。

ちなみに、山崎部長が時計の狂いに気づいてもすぐに直さなかったのには理由がある、
と私は睨んでいます。部長は1分ほど、ぐるりと部下たちの顔を見ている間にこう思って
いたに違いないのです。

「誰か、率先して時計を直してくれるヤツはいないかな?」と。
しかし、結果的に誰も直してくれませんでした。その時、部長は大変残念に思ったに
違いありません。課長レベルでこれか、と。そして危険な兆候を感じたはずなのです。
そんな思いで自らが立ち上がった。よっこらしょ、と。

山崎部長の一連の行動は「ディスプレイ行動」であったのかもしれません。
「ディスプレイ行動」とは相手にわかるようにわざと大げさに行動を見せつける行為を
指します。別名は示威行動。

「おい。みんな。頼むぞ。気づいてくれよ。時計の狂いがあったら、すぐに直すんだぞ。
それは上位者たる課長の君たちの大切な役割なんだぞ」
それを言葉にする代わりに行動で示した。そんな気がしてならないのです。

会議室の時計、観葉植物の落ち葉、コピー機の脇のミスコピー用紙、受信済みのファックス
用紙…。私たちは、それに気づいたとき、自ら率先して行動しているでしょうか。
私たちの上司は、それをじっと見ているかもしれません。

もしかしたら私たちは、たった一つの行動により、上司からリーダー失格の熔印を既に
押されているのかもしれません。人は人をそのように見るもの。心して行動したいものすね。

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