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12月7日配信 小倉広メルマガ vol.230『失敗と後戻りを繰り返さないと強くなれない』



vol.230「失敗と後戻りを繰り返さないと強くなれない」
出典:折れない自分のつくり方

-確固たる自分軸を得るために

これまで、自分軸をつくり上げる話をしてきたが、このとおりにやったからといって、
そうそう簡単に自分軸をつくれるというものではない。確固たる自分軸が一朝一タで
できるわけはないからだ。そうではなく、少しずつ折れない自分軸を積み上
げていくのだ。失敗と後戻りを繰り返しながら、少しずつ確固たる自分に近づいていく。
大地に根を張っていくのだ。

たとえて言うならば、風に運ばれてきた砂が、少しずつ少しずつ積み上げられ、
砂柱ができていくようなものだ。それが積み上がる過程では、思わぬ突風が吹いたり、
あらぬ方向からボールが飛んでくることがある。そのたびに揺れる、迷う。
築き上げたものが崩れ去ることだってある。

当の私にもかつてこんな決定的な失敗があった。

今から数年前のこと。
私は当時直属のメンバーであった安田部長(仮名)を会社の近くの喫茶店に呼び出した。
前日、メンバーの何人かに部長のやり方について相談を受けていた。
どうしても納得できない、と。本来であれば私の出る幕ではない。部長に任せた以上、
私は見守るべき立場だ。だが、それは私も以前から気になっていたことでもあった。
だからこの機会に一度胸襟を開いて話しておくべきだと思ったのだ。

「部長のやりたい方向はわからんでもないが、あのやり方ではメンバーはついてい
かないぞ」

私は具体的な例を挙げ、部長の問題点を指摘した。以前から感じていた事柄についても
言及した。ただただ部長に問題意識を持ってもらい、一皮むけてほしいと願ったからだ。
言いたかったことのすべてを伝えると部長は「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
私の見解を素直に受け留めてくれたかに思えた。

-後ろからポールが飛んできた
しかし翌日。
今度は部長に呼び出された私は、部長の話に狼狽させられることになった。

「小倉さんはひどい」

第一声がそれだった。いったい何が起きたのかわからなかった。咋日あんなに素直に
話を聞いていた安田部長が逆切れ? 私は、激しくうろたえていた。

「私だって辛い立場なんです。会社のことを思えばこそ、メンバーに言いづらいことも
言ってきた。小倉さんの代わりに悪役を買って出ていたようなものですよ。
それなのにメンバーと一緒に私を責めるなんて。そんなときに私を守るのが小倉さん
の役割なんじゃないですか? 私だってやりたくてやっているわけじゃない」

面談の間、私は頭が混乱し、言葉を飲み込むばかりだった。彼の言葉はまったく
の予想外だった。前を向いて外野で守備をしていたら、いきなり観客席から 、
ボールを後頭部に投げつけられたような感じだ。それほどの不意打ちだったのだ。

その後結局、彼は我が社を去っていった。この面談だけが原因ではないだろうが、
私は、彼をうまく導き、組織が機能するようにできなかったのだ。

-自分軸に近道はない
私は揺れた。
自分が正しいと思う方向を見つけ、強固な軸ができてきたかに思えても、 ひとたび
予想もしない事態に陥ると、私は自分の判断に自信が持てなくなってしまった。
揺れている私が、メンバーにさらに動揺を与え、事態をますます悪くさせた。
自信が揺らぎ、メンバーが去ることに恐怖を感じた。私はまたしてもメンバーの顔色を
気にするようになっていた。

強固に思えた土台は、簡単にひび割れた。多くの時間を費やして前に進んできた
はずなのに 一瞬にして後戻りした。風に運ばれて積み上がっていた砂は、突風に
さらわれて吹き飛んでしまった。

だが、失敗を繰り返し、痛い目に遭えばこそ、軸はより強く、盤石なものになっていく。
私も安田部長とのことから学ぶことができた。メンバーを指導するとき、叱るとき、
こちらにはそれ相当の覚悟が必要であるということだ。反発されたり、
無視されたりする可能性を織り込んで事前に自問自答を繰り返す。それでもなお、
自分は指導する覚悟があるだろうか、と。この指導や叱責は、利他であり、120%
努力をした結果か、と。そこに自信を持ってYESと自答できてから、指導すべき
であったのだ。自問自答が薄いままに私は安田部長に指導をした。だから、予期せぬ
反発にうろたえてしまったのだ。

失敗やボールが飛んでくる方向を想定の中に織り込んで、揺れない軸ができ上がっていく。
おそらくそこに、近道はない。
確固たる自分軸は一朝一夕ではつくれない。
焦ってはいけない。
信念という砂の柱を少しずつ積み上げていくのだ。

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