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10月23日配信『「難しいよね」と言ってはならない』



「『鳥獣には今日の物を明日に譲り、今年の物を来年に譲るという道はない。人はそうではない。今日の物を明日に譲り、今年の物を来年に譲り、そのうえ子孫に譲り、他人に譲るという道がある。雇人ちなって給金を取り、その半分を使って、半分は将来のために譲り、あるいは田畑を買い、家を建て、蔵を建てるのは子孫へ譲るためだ。』。二宮尊徳先生は、こうおっしゃっているわけです」

小倉広「人間塾」第九回のテキストである「二宮翁夜話」を引用しながら私が解説をすると、数名の塾生さんがこそこそ、とおしゃべりをしたのが聞こえた。
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「わかるけどねぇ。実際には難しいわよねぇ……」。そう言って二人で笑ったのだ。

私はもったいないな、と思った。注意しようかな。そう思ってやめた。時間をおき、最後の総括の場面で語ればいい、と判断したからだ。

そして、ディスカッションが終わり、いよいよ総括の場面となった。私は、おしゃべりをしていた二人を特定せずに、あくまでも一般論としてこう語った。

「本を読み、そこからできるだけ多くのことを学ぼうと思うならば、フィルターのスイッチをOFFにすることが大切です。『ここはいいことを言っているが、ここはどうも違うな』とか、『この話はうちの会社にも当てはまるが、この話はうちの業界には当てはまらないな』のように、フィルターをかけていては、本当の意味での学びはできません。そうではなく、すべてを『正しい』と丸受けするのです」

「もしも『おかしいな……?』と思う箇所があった場合は、『私が間違っているのかも知れない』『私のレベルが低いから理解できていないんだ』。そう思うのです。そして、著者がいっていることを『どのように考えれば受け容れられるようになるのか?』と考え、受け容れられる方法を探すのです。すると学びが格段に深くなる。そこで初めて、著者の言いたかったことがわかるようになるのです」私は続けた。

「同様に、読み終わった後も大切です。多くの人は本を読んだ後にこう言います。『確かにいいことは書いてある。でも、難しいよね……』そう言って『思考停止』してしまうのです。『難しいよね』というたったの一言で、せっかくの学びをゼロリセットにしてしまう。読まなかったのと同じにしてしまうのです。これはもったいない」

私はちらりと、先の二人組の様子を見た。ドキッとしているようだ。私は視線を中央に戻し、こう解説をした。

「難しいよね」を言ってはならない。そこで「思考停止」をしてはならない。そうではなく「どうすればできるだろうか?」を考え続けるのだ。そして、ひとつでも、二つでも実行してみる。それを継続、拡大していくのだ。

「難しいよね」そう言い、笑い合うことは、互いに免罪符を発行しあおうようなものだ。互いにハードルを下げ、慰め合うようなものだ。負け犬が傷をなめ合うようなものだ。だから、言わない方がいい。私はそう思っている。

次回、人間塾 in 東京のテキストは佐藤一斎の「言志四録」。吉田松陰ら幕末の志士に多大なる影響を与えた朱子学、陽明学の大家である。

大変中身が濃く、実行が「難しい」ことばかりが書いてある。しかし、「難しいね」と言ってはならない。私も塾生さんたちも皆、その言葉をこらえ、ぐっと実行に移すよう努力をしている。皆さんも、禁句にしてみてはいかがだろうか。

以上

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