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10月13日配信 小倉広メルマガ vol.219 『 手を貸さずにジャンプさせる』



vol.219「手を貸さずにジャンプさせる」
出典:任せる技術

-説得されて任された部下は上司のせいにする
部下に仕事を任せる時、絶対にやってはならないのが、嫌がる部下を「説得」することだ。
「おまえはリーダーに適任だ。ぜひリーダーをやってくれ。頼む」
「本当はやりたくないんですけれど……。
どうしても、と言うのなら、仕方ないので引き受けます……」

こんなやりとりの末に部下にリーダー職を引き受けてもらったとしたら、
それはあらかじめ失敗を確定させたようなもの。次から次へと問題が起きることだろう。

新たに任された仕事により困難に立ち向かうあなたの部下。必ずや彼は強いプレッシャーと
ストレスに悩まされるはず。あるべき理想のリーダー像と現在の自分とのギャップ。
そこに強い違和感=認知的不協和を感じた部下は、それを解消するために二つの行動
のどちらかを選ぶのだ。

一つ目は努力して自分を変えることにより困難を乗り越える方法。これが「自分に矢印
を向ける」解決方法だ。この方法を選んだ部下は成長する。あなたが思い描いた通り、
仕事を任せることにより成長する。しかし、もう一方を選んだ部下はその逆の道を
たどることになる。それが「上司に矢印を向ける」解消方法だ。

「こんなにつらい目に遭うのは上司のせいだ。上司が無理やり自分に無理難題を押しつけ
るからできないのだ。加害者は上司、自分は被害者だ。自分のせいじゃない」。
このようにできない原因をすべて上司に押しつけてラクになろうとする。自己正当化を行うのだ。

「上司に矢印を向ける」方法を選んだ部下は成長できない。
当然ながら任せた仕事は失敗するだろう。さらには、任せたがゆえに、
あなたと部下との間には溝ができてしまう。「こんなことならば任せなければよかった……」。
しかし、覆水盆に返らず。部下を説得して任せる。絶対にやってはならない方法だ。

-溝を跳び越えてジャンプして来い!
では、部下を説得せずにどのようにして仕事を任せればいいのだろうか?
答えは、部下に自分で選ばせること。仕事を任せるかどうかを、任される側の本人の意
思で決めさせるのだ。

そのためには、仕事を任せることのマイナス面を包み隠さず話すことが必要だ。
任せる以上は、部下に対して厳しく結果を求めていくこと。上司である自分の支援には限界があること。
スケジュール的な厳しさや、プレッシャーの大きさなど。あらかじめマイナス情報をすべて
きちんと開示することで、地面にぽっかりと空いた溝の深さを知らせておくのである。

その上で、部下が自分で決断するのを待つ。大きく深い溝を自分でジャンプするかどうかを
決めさせるのだ。つまりは、リスクを覚悟で自己決定をさせる。それが重要だ。
もちろん、伝えるべきはマイナス情報に限る必要はない。その仕事を通じて身につけられる
スキルや経験、成し遂げたことによる達成感や、やりがい。さらには、上司としての
あなたからの期待もきちんと伝えたい。ただし、行きすぎて「説得」にならぬよう、
あくまでも「期待」でとどめることが重要だ。そして最後にこう伝えるのである。

「どちらを選ぶかは君次第。ぜひ自分自身で決めてくれ」と。
自分で決めたことについては誰にも文句は言えないはず。つまり「上司に矢印を向ける」
ことができなくなり、高いモチベーションが発生する。結果として成功する確率はグンと
上がることだろう。嫌がる部下を「説得」して任せた場合と雲泥の差が生じるのだ。
だからこそ、自分で決めさせなくてはならない。
自分でジャンプさせることが重要なのだ。

-上司は常に選択肢を用意する
「どちらを選ぶかは君次第」
そう伝える以上、上司は部下から「断られる」という事態を計算に入れておかなければならない。
つまり、もう一つの代替案を用意する必要がある。そうでなければ、余裕を持って
「自分で決めてくれ」とは言えなくなる。結果として、無理やり部下を「説得」して
しまうことになるからだ。では、お目当ての部下に任せることができなかった場合、
他にはどのような選択肢があるのだろうか?

一つ自の選択肢は、他の部下にその仕事を任せる、という方法だ。
二つ目の選択肢は元に戻ってしばらくの間は自分自身でその仕事をする、という方法だ。
三つ目には、これを機にその仕事をなくしてしまう。仕事のリストラをする、という方法だ。
ただし、三つ目は可能な場合と不可能な場合がある。そのため、原則としては一つ目と
二つ目の方法をもとに代替案を用意することになるだろう。

その場合、当然ながら優先して考えるべきは一つ目の方法。すなわち他の部下に任せる、
というものだ。おそらく、第一候補として考えている目先の任せたい部下に対して、他の
候補は第二候補となることだろう。それはすなわち「より頼りない」相手に仕事を任せることに
なる、ということ。あなたは大きな不安を感じることだろう。
しかし、そこで後戻りをしてはいけない。二つ目の方法である「自分でやる」に戻らないよう
勇気を振り絞って任せる相手を決めるのだ。その際には、上司からのサポートの割合を増やす、
などの担保策が必要になってくるだろう。

そのような担保策を探り、できる限り可能性を高めた上で、第二候補を定めておくのだ。
このようにして代替案を用意してから、余裕を持って第一候補に伝えるのだ。
「受けるかどうか選んでくれ。決めるのは君だ」と。

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